(「武田ランダムハウスジャパンHP」より)
12年12月14日、武田ランダムハウスジャパンの破たんの報が出版業界を駆け巡った。久々に知名度の高い出版社が倒産に至った。同社はもともと、講談社とアメリカの出版社・ランダムハウスとの合弁会社「ランダムハウス講談社」として設立された出版社。その後、ランダムハウスの経営不振により、両社の合弁が解消される際に、社長の武田雄二氏が全株式を引き取り、10年に武田ランダムハウスジャパンとして再出発していた。しかし、年商13億円を叩き出すような業績のピークはとうに過ぎ、業績は悪化し、今回の措置となった。
少しずつ中小の出版社が廃業に追い込まれていく中で、いよいよ大手も安穏とはしていられない状況が来ていると、業界は騒然としている。ある出版社の営業幹部は言う。
「主婦の友社が、どうも厳しいようだ。大日本印刷が親会社である以上、潰れることはないだろうが、決算も赤字で、すでに10人以上もリストラされているほか、経費の25%削減など経営改善を求められているらしい。また、神保町にある別の出版社は親会社から売りに出されてしまっているとも聞いた。今年からは出版計画もシビアになるようだ。それに、ある講演会で、新人物往来社の飯田日出男社長が下期の出版計画を3割減らしたと話していた。その理由は、本が売れないからだという。そして、今後はもっと売れなくなるとも付け加えていた。その後すぐに、親会社の中経出版との合併を発表した。こうした業界の先を見越しての合併だろう。飯田社長が言う通り、12年は本当に本が売れなかった。新刊書籍が6〜7割返品されるのも当たり前になってしまっている……」
また、別の出版社の営業担当者はこう話す。
「ある統計では、出版社の倒産件数が最も多かったのは09年。その後は減少し、11年に起きた大震災の年でも、大きな出版社の倒産はなかった。だが、12年はまた少し増えている。日本出版社の自主廃業が目立ったところだ。これは氷山の一角で、資金繰りで頭を悩ます中小出版社の経営者は多い。後継者もおらず、会社を売りたいと考える経営者も増えているようだ」
これまでも出版不況と言われて、「本が売れない」「本が売れない」と業界は嘆き続けた。だが、それでも当時はまだ余裕があり、どこか他人事のようでもあった。しかし、現状を語る、前出の出版社営業の表情は硬く、余裕すら見受けられない。まさに崖っぷちの状況にあるのだ。
出版界の統計データを調査する出版科学研究所によると、12年1〜10月期までの書籍・雑誌の推定販売額は前年比3.2%減の1兆4578億円と、大震災の影響で落ち込んだ11年の実績を下回るかたちで推移している。落ち込み幅は書籍よりも雑誌のほうが大きく、書籍は同2.3減、雑誌は同3.9%減ほど。11月期、12月期が11年と同水準で推移したとしても、12年は1兆8000億円には届かず、1兆7000億円台に落ち込むことが予想されている。しかも、3年後には1兆4000億円台にまで減少することまで予測されている。