12年12月10日発売された『このマンガがすごい!2013』(宝島社)でオンナ編1位、11月発表の「コミックナタリー マンガ秋100」(コミックナタリー)でも1位と、とにかくプッシュされているのだ。
各サイトやブログでもレビューが上がっているから作品の説明は簡単に留めておくが、柔道部の角刈り、こわもての男子高校生が、すごくかわいい女の子から告白されて、付きあって、ルンルン……という、男子の妄想が具現化したみたいなマンガだ。しかも、これの連載誌が、少女マンガの王道雑誌「別冊マーガレット」とくると、昨今のマンガの混沌ぶりも伺えよう。
そもそも、そんなマンガ賞自体、かなりの数が乱立している。上記にあげた、「このマンガ」、「マンガ秋」のほかにも、「マンガ大賞」(有志)、「このマンガを読め!」(「フリースタイル」誌上)、「NEXTブレイク漫画ランキング2012 BEST50」(「オトナファミ」誌上)のほか、小さな賞も含めるとかなりの数がある。
これらの賞は、いったいどういうビジネススキームで運営されているのだろうか。その実態をシンプルに見るならば、本の売り上げだろう。
「このマンガがすごい!」(予想実刷数6〜7万部)や「オトナファミ」(エンターブレイン刊。/書店向け刷数7〜8万部)、「フリースタイル」(フリースタイル刊/予想実刷数5000〜1万部)などが、これにあたる。それなりに、部数も出ているのだ。
このほか、「マンガ大賞」は、日本放送・吉田尚記アナウンサーが中心に作った団体で、「手弁当」で、お祭り好きの人によるボランティアで運営されているというが、インディーズ企画なのにこれはこれで書店などでも大きく扱われているから、すごい。
ただし、「NEXTブレイク漫画ランキング2012BEST50」を特集にした「オトナファミ」9月号は前後の特集号と比較すると、10%程度、書店での売り上げが小さく、必ずしも「おいしいネタ」になるわけではない。同様に「このマンガがすごい!」もそれほど儲かっていないはずだし、さらにいえば、「フリースタイル」などは、実売数から採算が取れているとはとても思えない。当然、ボランティアの「マンガ大賞」は儲からない。それにもかかわらず、これらの賞が、身の丈より必要以上に大きく取り上げられているのには、事情がある。
たとえば、11年の「このマンガがすごい!」オンナ編1位の『花のズボラ飯』は、1万部売れれば御の字の近年のマンガ単行本のなかでは異例といえる、20万部に近い数数をマークしている(推定)。また、オトコ編1位の『ブラックジャック創作秘話』についても、「このマンガがすごい!」が発表となった11年の年末の1カ月の数字を見れば、発売初月の10倍以上の冊数が売れているから、こちらも影響は驚異的だ。
この出版不況下でこれらの賞は、マンガ出版社にとっては、乗っかって盛り上げれば盛り上げるほど儲かる、お得な賞なのだ。
それだけに、12年は集英社が、オトコ編・オンナ編でダブル受賞、11年は秋田書店がダブル受賞となり、「このマンガがすごい!」については、2ちゃんねるなどで、「癒着」がことさら言われる。