大企業ブラック化、アベノミクスでも賃金上がらないワケ…ストしない連合の怠慢
報じる1月11日付朝日新聞より
1月29日である。「アベノミクス」(大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略)の一環で、景気てこ入れへ積極的に財政出動する2013年度予算案が決まり、経団連の米倉弘昌会長と連合の古賀伸明会長も会談、春闘という“茶番劇”が事実上始まった。
●安倍首相、賃上げ要請という茶番
そして、2月12日、首相官邸で「デフレ脱却に向けた経済界との意見交換会」が開催され、安倍晋三首相が経団連の米倉会長、経済同友会の長谷川閑史代表幹事、日本商工会議所の岡村正会頭の経済3団体トップに「業績が改善している企業は報酬の引き上げをぜひ検討してほしい」と要請した。経済界の協力で、従業員の賃上げという、目に見える形で「アベノミクス」の効果を国民全体に浸透させるのが狙いだが、これも“茶番劇”以外の何ものでもない。
首相が大胆な金融緩和策を訴え出した昨年11月中旬以降、マーケットはといえば、2月12日に円相場が約2年9カ月ぶりに1ドル=94円台まで下げている。株価のほうも2月1日に日経平均株価が1万1191円と約2年9カ月ぶりの高値を付け、週間ベースで12週連続の上げ相場となった。翌週末(2月8日)はマイナスだったものの、「岩戸景気」の時の1958年12月~59年4月の17週連続に次ぐ2番目の長さだった。
この円安、株高に、新聞はじめマスコミも浮かれ気味になっている。
●景気回復でも給料は下がり続けた
だが、ほんの5年前までのことを思い出してほしい。実感に乏しかったとはいえ、日本は02年1月から景気回復過程に入り、期間は07年10月まで戦後最長の69カ月(5年9カ月)に及んだという事実だ。高度成長期の「いざなぎ景気」(1965年11月から4年9カ月)を上回った。
この間の円相場は1ドル=100~130円台で推移し、株価も06年末の日経平均で1万7000円台だった。浮かれるのは時期尚早なのだ。それだけではない。69カ月の回復過程を経てもデフレを抜け出せなかった。サラリーマンの給料が下がり続けたからだ。
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、02年に448万円だったサラリーマンの平均年収は07年には437万円に減った。11年は409万円で、ピークの1997年より58万円も減っている。
とにかく、この年収を底上げしない限り、デフレからの脱却は難しいのだ。だから、安倍首相も国民に賃上げに動いていると見せる必要があるのだが、肝心の労働者側が動かなければ、絵に描いた餅にすぎない。
サラリーマンは憲法第28条で、団結権、団体交渉権、争議権(ストライキ権)の労働基本権を保障されている。しかし、この四半世紀、日本の労働組合はストライキ権をほとんど行使していないと言っても過言ではない。
今春闘で連合は定期昇給を最低限の課題とし、非正規社員も含めた給与総額の1%増を目指している。対する経団連側は円安で業績上方修正が相次いでいるにもかかわらず、定期昇給すら延期や凍結もあるという立場で、マスコミは「交渉難航は必至」と口を揃える。
●ストをしない連合は“労働貴族”
連合が本気で賃上げを目指す気があるなら、ストライキ権という「伝家の宝刀」を使わない手はないはずだ。しかし、今春闘でもストライキはないだろう。
なぜか?
一定額以上の所得を得ている者には、なだらかなデフレは心地よい面がある。経営者はもちろん、連合首脳陣はじめ大労組幹部の “労働貴族”もそうした所得階層の人間だ。連合は組合員に最大限の努力をしたと見せれば事足りる。経営者側と同じ穴の貉なのだ。だから、サラリーマンの賃金がダラダラ減り続ける。
連合の怠慢は賃金問題だけではない。65歳までの雇用を義務付けた改正高年齢者雇用安定法の4月施行を控え、名だたる大企業で“追い出し部屋”を作って自主退職を迫る動きが目立ち、ブラック企業並みのサービス残業が横行しているという。