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吉田潮「だからテレビはやめられない」(4月8日)

テレビがマツコ・デラックスだらけのワケ 専門家、芸人、タレントも凌駕で最強?

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マツコ・デラックスの所属事務所・
ナチュラルエイトのHPより
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 先週はまさに「マツコ・デラックス・ウィーク」だった。

 毎週、マツコがメインで出演するレギュラー番組は楽しみにしている。マツコがメインではなく大勢の中のひとりという扱いの番組は、基本的に面白くないので観ていない。「どれだけマツコに依存してんのか、アタシは」と自分ツッコミを入れたいところだが、マツコ頼みなのは何も視聴者だけではない。テレビ局側も、今じゃ「春のマツコ祭り」である。白いお皿は当たらないけれど。

 4月4日は『池上×マツコ ニュースな話』(テレビ朝日系/19:00〜)、『アウト×デラックス』(フジテレビ系/10:00〜)、5日は『マツコの知らない 〜SP〜』(TBS系/21:00〜)と、たった2日間でプライムタイムはマツコだらけ。こうなると、なかばメディアジャックレベルだ。

 基本的に、テレビに出すぎていると飽きられるのも早いはず。マツコは確か2年前くらいから露出がグンと増え、民放キー局はほぼ制覇。それでも飽きない・飽きられないのは、マツコが各種芸能人や有名人の特色をすべて満たせるからだ。もっと言えば、スタジオに不要な芸能人を切り捨てる“リストラ&ギャラ節約”を可能にしたのがマツコである。

 池上彰とサシで、ほかのゲストなしに構成した『池上×マツコ〜』は、社会情勢や日本が抱える問題点に斬りこむ番組だった。今までの池上起用スタイルは、おバカな芸能人相手に池上がわかりやすく解説するのが定番だった。が、もはやおバカな芸能人は不要で、核心を突くことが池上にも求められている時代。そこで適役だったのがマツコである。

 知ったかぶりするでもなく、ドン引きするほどKYな質問をするでもなく、ちょうどいい塩梅で現状を咀嚼していくのはマツコならでは。少し小さくまとまりすぎた感もあるし、池上から最後に「いつものマツコと違う」とツッコまれてはいたけれど。

 また、『アウト×デラックス』は素人玄人問わず、痛々しいキテレツさん(アウトな人)を呼んで盛り上げる番組だが、そもそもマツコも一般社会で言えばアウトな人。だからこそ、嘘偽りや余計な気遣いをすることなく、アウトな人をいじり倒せるわけだ。こうした番組は、自分がまっとうだと信じて疑わない人にMCをさせても、鼻につくだけである。

『マツコの知らない世界』は、いまだ買い控えと節約から離れられない、貧乏くさい日本社会に、消費欲を煽ることに成功。次々と出される食品をたった3口で美しく食べていくマツコは、ベテラングルメレポーターをこぞって失業させるレベルである。

 セクシュアルマイノリティであり、男であり、女(装)であり、オジサンでもあり、オバサンでもあるマツコ。芯の通った物言いは評論家や専門家の人々の代わりになる。毒舌と自虐のバランスの良さは、お笑い芸人を凌駕している。図々しさと業の深さは熟女タレントよりはるかにうわてだ。性別も世代も越えて、あらゆる層の共感を得られるなんて、最強である。そのうち、出産や育児についてもキレのある提言をしてくれるんじゃないかと思うほど。そうなると、ブログ炎上と物販で稼ぐB級ママタレたちも職を失うだろう。

 とはいえ、マツコ自身がまったく興味のないことまで手を広げさせられるのも、さぞかしツラかろう。そのうち、消費されて疲弊し、死んだ魚のような目になったマツコが映し出されるかもしれない。そうなる前に、大橋巨泉のようにやり逃げしちゃいなよ。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。