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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第6回

ポイントカードとビッグデータの怖い話…あなたが価格を気にしない顧客であれば要注意?

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「Thinkstock」より
 数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。

 消費者を相手にビジネスをしている会社にとって、いい顧客とはなんだろう?

 高額な商品を買ってくれる顧客? ちょっと惜しい。正解は価格をそれほど気にしない顧客である。

 それはそうだろう。価格敏感度の高い顧客は、ほかにもっと安い商品を見つけたら、すぐにそっちのお店に出かけてしまう。ネットでそういう人ばかり相手にしている会社は、「価格.com」の最低価格を意識して、常に最安値の値付けを続けなければならない。だから、そんな顧客は本当はうれしい顧客ではない。

 実際、私自身は高額な商品を買う割には、価格敏感度が非常に高い消費者である。たとえば今月と再来月の2度、ニューヨーク出張をすることになっている。両方ともビジネスクラスの航空券を押さえているが、どちらも30万円未満の航空券だ。普通はこの路線のビジネスクラスは60万円台で、格安でも45万円程度だから、私のような、どこかから底値のチケットを探してくる消費者を相手にしていても航空会社は儲からない。

 しかし世の中は価格敏感度の高い人ばかりではない。ビジネスクラスに乗るような高額商品を買う人のおそらく3分の2は、平均的な45万円~55万円程度の割引航空券を選ぶし、3分の1は普通の60万円台の航空券でも疑問を挟まずに、気にせず購入する。

 そして会社に儲けを稼ぎ出してくれるのは、結局のところ、そのような価格を気にしない顧客をどれだけ多く抱えているかによるのである。

●価格を気にしない顧客の見つけ方

 ところで、あなたは企業が“価格を気にしない顧客の見つけ方”を一生懸命研究していることをご存じだろうか?

 昔からいろいろな手段が試されてきたが、ビッグデータがもてはやされる昨今では、世の中にかなり浸透してきた“ポイントカードを使う”という手が有効な入り口になっている。

 具体例を挙げて説明しよう。スーパーの食品売り場の場合、平均すると70%の商品が特売価格で売られ、30%の商品が通常価格で売られている。平均的な消費者も、だいたいこの比率で購入する。

 それはそうだろう。今日の夕食がカレーライスの予定で、牛肉とカレールーは特売品が売られているが、玉ねぎと人参はそうでもなかったとしたら、多くの主婦はそれらをまとめて買う。だからショッピングカートの中には、平均して70%の特売品と30%の通常商品が入っている。

 ところが私のような価格敏感度の高い顧客は、スーパーに入ってざっとそのような価格だとわかったら、その足で200m先の別のスーパーに入っていく。その別のスーパーでは逆に玉ねぎと人参が特売で、カレールーも最初のスーパーよりもちょっと安いことに気づくと、その3点を買って家に戻る。帰り道に最初のスーパーがあるので、そこでは特売の牛肉だけ買って帰る。こういう私のような底値買い・比較買いをする顧客は、本当はスーパーはあまり相手にしたくない。

 そこでポイントカードの出番である。顧客の利用履歴を分析して、支払額の中で特売品の比率が何%かを分析すればいい。すると顧客が3つのセグメントに分かれることがわかる。

 ・私のように特売品の比率が90%近い顧客。
 ・特売品の比率が60~80%台と平均的な顧客。
 ・特売品の比率が60%未満と平均よりも低い“価格を気にしない顧客”

である。