ビジネスジャーナル > マネーニュース > 宝くじなんて損は本当orウソ
NEW
鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第2回

「宝くじなんて損」は本当orウソ…カジノより儲けられる!

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
【この記事のキーワード】, ,
「宝くじなんて損」は本当orウソ…カジノより儲けられる!の画像1「Wikipedia」より

 数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。

 この原稿を書いている時点では、まだ年末ジャンボ宝くじの窓口は大賑わい。1等前後賞あわせて最高当せん金は6億円。しかも今年は、1等4億円が過去最高の68本。12月31日の抽せん日には億万長者が最大204名誕生するというから、数寄屋橋交差点の宝くじ売り場に長蛇の列ができるのも無理のないことであろう。

 などと書くと、

 「宝くじを買うなんて損に決まってるじゃないか」

と教えてくれる親切な人が、必ず周囲に1人や2人はいるはずだ。

 現に私も新入社員の頃に職場で宝くじについて熱く語っていたところ、コンサルタントの先輩から宝くじを買ってはいけない2つの理由というのをイタいほど聞かされた。

 その理由を先輩の口調で言うと、こういうことになる。

「ひとつ! 宝くじの払い戻し率は50%以下だ。お前らが買う宝くじの売上の半分は、お上に税金で持っていかれるんだぞ。ラスベガスのルーレットの払い戻し率は95%、競馬は80%。それでも儲かるのは胴元だけだ。払い戻し率50%のギャンブルなんて絶対にペイするわけがない」

「ふたつ! ジャンボ宝くじで1等になる確率がどれくらい低いか知っているのか?交通事故で死ぬ確率のほうがよっぽど高いんだぞ。お前は自分が交通事故で死ぬなんて思っていないだろう。だったら宝くじにだって当たるはずがないじゃないか!」

 とまあだいたいこの2つの強靭なロジックで、若者のあぶく銭への夢は一刀両断に斬り捨てられることになる。

 さて、この先輩のような意見を信じて「ジャンボ宝くじを買うのは割に合わない。宝くじなんて買わない」と決めている方へ、その結論は間違っているかもしれないという話をします。ちなみにこのお話、論理学の少しマジメな勉強になる話なので、そのつもりで心して読んでください。

●「宝くじは損」は事実として正しい?

 ひとつはっきりさせておくと、この先輩が挙げた理由とやらは事実としては正しい。ジャンボ宝くじで6億円目指して10枚連番の宝くじを購入した場合、購入金額は3000円だが、平均の払戻金はだいたい1400~1500円の間になる。つまりすべての購入者への払戻金を合計すると、払い戻し率は50%よりも少ないというのは事実だ。

 もうひとつ、1等が当たる確率は1000万分の1。前後賞を含めても1000万分の3しかない。そこで年3回のジャンボ宝くじを毎回買う行動を生涯100年間続けたとして、当せん確率は10万分の9にしかならない。億万長者になる確率は0.009%というか1万人に1人というか、そんな程度の確率だ。

 一方、残念なことに交通事故死者は年間5000名と、宝くじで億万長者になる人より1桁多い。1年だけで考えれば、交通事故で死ぬ確率は0.004%だが、生涯100年のどこかで交通事故で死ぬ確率は概算で0.4%と結構高い。

●論理的なごまかし

 つまり事実だけで考えればこの論拠は正しいのだが、実はこの先輩の論理には間違いがある。一見正しい説明に見えて、論理に2カ所ごまかしがあるからだ。

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

「宝くじなんて損」は本当orウソ…カジノより儲けられる!のページです。ビジネスジャーナルは、マネー、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!