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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第2回

「宝くじなんて損」は本当orウソ…カジノより儲けられる!

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 それが何かわかりますか?

 できればここで一旦画面から目を落として、先輩の論理のどこに間違いがあるのかを考えてみていただきたい。

 さて、論理のごまかしのその1は、「払い戻し率50%のギャンブルはペイしない」という論理。一見正しいように見えるが、この結論にはごまかしがある。

 わかりやすくルーレットの例で説明しよう。1万円を元手にルーレットで儲けるためには、次のふたつの戦術のうち、どちらが正しいだろうか?

(1)100円ずつ一晩中、赤の目に賭ける
(2)1000円ずつ10回、1の目に賭ける

 実際にやってみるとわかるが、(1)をやった人のほとんどは、夜明け頃には手元のお金はじりじりと減っていく。これが大数の法則というもので、赤か黒か(ないしはルーレットの場合は0や00か)という5割弱の確率で行われるゲームは、たくさんの回数ゲームを行うと結果はほぼ確率通りになることが法則としてわかっている。

 一方で(2)の戦術をとった人は、4人のうち3人はゲームを始めて1時間以内にすっからかんになる。ただし4人のうち1人は1の目を当てて36倍、つまり3万6000円の配当金を手にすることになる。

 ここでのギャンブルの目的は儲けることだとしよう。もし8人のギャンブラーが4人ずつ(1)と(2)の戦術をとったとして、翌朝に「儲ける」ことができているのは(2)の戦術をとった4人のうちの1人だけ。(1)では永遠に儲からないのだ。

 ルーレットに勝つ唯一の方法は、そうして(2)の戦術をとって36000円を手にした瞬間にゲームをやめて、部屋に戻ってウィスキーを飲むことだ。

●ボラティリティの高さが重要

 つまりギャンブルで儲けることを目的にするならば、確率よりもボラティリティ(変動の激しさ)が高いことのほうが重要なのだ。

 もしルーレットで6億円稼ごうと思うのなら、決して1万円を赤か黒かにせっせと賭け続けてはいけない。そうではなく、3億円を赤に賭けるか、2000万円を1の目に賭けたほうが、よほど6億円を稼げる可能性は“ある”。

 言い換えると、ギャンブルで6億円を手に入れようという前提で考える以上、可能性が高いかどうか(確率)や期待値が掛け金に近いかどうかよりも、可能性があるかどうか(ボラティリティが十分に高いかどうか)のほうが重要なのだ。

 だから1発で6億円当てて人生を逆転したいと思う人は、ボラティリティの高い宝くじを買うほうが正解で、宝くじよりもボラティリティのはるかに低いルーレットの赤の目に、なけなしの3億円を一発勝負で賭けるような行動をとるほうが愚かなのだ。

 おわかりでしょうが、実際、身近に宝くじを3000円投入する人と、ラスベガスに3億円持って行く人がいたら、どっちが愚かに思えるか?(そういう大企業のぼんぼん経営者もいたが……)

 その愚かさがわかれば、払い戻し率が高いルーレットのほうが宝くじを買うよりもましだという論理は、間違っていることもわかってもらえるはずだ。

 もうひとつの論理、交通事故で死ぬ確率のほうが、ジャンボ宝くじで6億円当たるよりも確率が高いという話は、どこで破たんしているのか? 

 論理がおかしいのは、「だからなんなの?(so what)」のところで論理が飛躍している点。センパイの意見通りなら「当たらないと思っているなら買ってはいけない」ことになるのだが、そこが正しくない。世の中には、当たらないと思っていても買ってもいいものはたくさんある。

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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