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家電製品の延長保証は加入するだけ損?意外な落とし穴も…自分で積み立ての方がいい理由

文=中西厚/ライター
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「gettyimages」より

 高額な家電製品を購入する際、値段以外にアフターサービスが気になる。サービスのひとつとして、ほとんどの家電製品にはメーカー1年保証がついてくるが、それを過ぎてからの故障ともなれば、たいていは数万円の修理費がかかり大きな負担となる。

 その負担をなくすために、家電量販店はもちろん、最近では通販であっても、購入金額の5%ほどの金額を支払えば延長保証に加入できるようになっている。もしものときの負担を嫌って、加入する人も多いと思われる。

 果たして、その保証料は家電製品を購入するたびに払う価値はあるものだろうか。結論から言うと、私はたいていの場合、価値は小さいのではないかと考える。以下、その理由を説明してみよう。

 まず、家電製品を最安値で購入できるのはネット通販であることがほとんどだ。販売業者はぎりぎり利益が出るところで最安値をアピールしている。そして、延長保証を引き受ける会社は販売業者とは別の会社であることが多く、この場合、延長保証会社は単独で利益を出さねばならないことになる。

 その利益はどれほどなのか、ここで考えてみよう。仮に5万円の製品100台が延長保証に加入する場合、合計500万円の5%で25万円が保証会社の売り上げだ。そして、延長保証期間である2~5年目までに壊れる確率を5%とし、5台が故障して修理代に平均2万円かかるとすると10万円の支出、差額の15万円が延長保証会社の利益となる。

 この計算から考えて長期的に見ると、加入すればするほど余計な金額を払い、保証会社を潤わせているとは言えないだろうか。さらに、上記計算では5%で考えた故障率も、実際はそれ以下であることが多いとも考えられる。なぜなら、家電が故障する場合、初期不良といって使用開始から数日~数週間で不具合が出ることが圧倒的に多く、それ以降は安定して稼働することがほとんどであるからだ。

 パソコン、カメラ、ゲーム機などの精密機器をハードに使用するというのであれば、1年間のメーカー保証期間後の故障率はもっと高いかもしれない。しかし、特に冷蔵庫や炊飯器などの生活家電の場合、メーカー保証期間を過ぎても、乱雑に扱わなければ、経年劣化による故障以外は起こりにくいと考えられる。

 パソコンなら3年、掃除機や炊飯器なら5年、冷蔵庫なら10年といった具合に、家電の種類によって延長保証期間が違うのはこのためだ。家電販売店や延長保証会社は、利益を確実に出すために故障率が高いところには保証を設けず、故障率が低いところを計算して保証していると言えるだろう。

 こういった事情から考えると、今後家電製品を購入するときは延長保証に一切加入せず、もし加入した場合に払う保証料と同額を積み立てておく方法を、私はおすすめしたい。これから新婚夫婦が新生活を始めるとして、今後15年でかかる家電製品の購入代金と延長保証料をシミュレーションした上で、検証してみようと思う。

延長保証に入っておいたほうがいいケースとは

年数 製品名 購入代金 延長保証料
1年目 冷蔵庫 100,000 5,000
1年目 電子レンジ 50,000 2,500
1年目 炊飯器 30,000 1,500
1年目 掃除機 30,000 1,500
1年目 洗濯機 70,000 3,500
1年目 テレビ 100,000 5,000
1年目 レコーダー 30,000 1,500
4年目 デジカメ 50,000 2,500
4年目 ビデオカメラ 40,000 2,000
7年目 レコーダー 40,000 2,000
8年目 掃除機 40,000 2,000
9年目 炊飯器 50,000 2,500
10年目 電子レンジ 100,000 5,000
11年目 テレビ 100,000 5,000
12年目 洗濯機 70,000 3,500
15年目 冷蔵庫 100,000 5,000
合計 1,000,000 50,000

 

 上記の表では、わかりやすくするためにちょうど15年で100万円の金額を家電の購入代金としてみたが、延長保証加入料をすべて5%とすると、合計5万円かかることになる。

 ここで、延長保証に入っておいたほうがよかったパターンを考えてみよう。たとえば、運悪く冷蔵庫が壊れて修理代に5万円ほど、さらにほかの家電も壊れて2万円ほど、15年間で合計7万円の出費になってしまったとすると、これは延長保証に加入しておくべきだったとなる。

 しかし、仮に故障率が5%とすると、上記の表では16品購入しているので、運がよければ故障なし、平均で1回、運が悪いと2回故障する程度だと思われる。特に高額な冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった生活家電の故障率は低いことを考えると、保証に入っておいたほうが得だったと後悔する確率は低いのではないか。

延長保証には意外なリスクも

 それならば、延長保証料として払うはずだった金額を積み立てておき、故障すれば使うこととして、15年の間に延長保証期間中の故障がなければ5万円プラスで返ってくると考えれば、延長保証に加入しない選択肢も積極的に検討すべきではないかと思う。

 確かに損をするかもしれないが、実際の故障率が低いと考えると、かなり勝率の高いギャンブルと言えるのではないか。何事もなければ丸々5万円、延長保証期間中の故障が一度あったとしても2~3万円が戻ってくる確率は高い。しかも、保証に加入しないだけで済むのだから、なんの手間もいらないギャンブルとも言えるのだ。

 付け加えると、延長保証といっても万能ではない。年数がたつと修理代全額保証ではなかったり、保証されるのは一度目の故障までだったりすることもあり、万全の保証とは言い難いところもある。さらに、通販で最安値購入の場合、加入した保証会社が事業を終了したりすると、その後は保証を受けられないリスクがあることも知っておきたいところだ。

 要するに、保険と同じわけである。保険とは、万が一のときに自分では払いきれない金額をカバーしてもらうものだとすると、死亡保険、健康保険、自動車保険などの加入は必須だと思うが、家電が故障したぐらいで、突然払いきれないほどの大きな出費になることはない。

 参考までに私の場合、実家の家電製品が故障した記憶はないし、自分で家電製品を購入するようになってから20年以上になるが、延長保証を使用したのは3万円ほどのビデオカメラのときだけだった(メーカー1年保証を使用したことは数回ある)。

 そのときは、子どもを撮影するのに過酷な環境で使用することが多かった記憶がある。パソコン、カメラ、ゲーム機などをハードに使用する場合は故障率が高まるので、そういった製品だけ加入するというのも、ひとつの選択肢だろう。

 延長保証に加入せず、保証料相当を積み立てする方法は確かに損をする可能性もあるが、上記のように検証してみると、たいていの場合は得をすることがわかる。メーカー保証が過ぎてから故障しても、お金の心配なく安心して修理に出したいという人は、安心料として支払うのもいいかもしれないが、保証料相当を確実に積み立てて突然の出費にもあわてることなく対処できそうであれば、上記の方法をおすすめしたい。

(文=中西厚/ライター)

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