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「単純労働者は受け入れない」という建前の崩壊

外国人のコンビニ店員は法令違反が多い!? それでも増える外国人労働者受け入れの実態

文=山脇康嗣/弁護士
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(「Thinkstock」より)
 近年、コンビニやファストフード店、居酒屋などで、外国人のスタッフを見かけることが非常に多くなったとお感じではないだろうか?

 日本の外国人政策は、「単純労働者は受け入れず、専門的・技術的労働者のみ受け入れる」というのが建前である。コンビニやファストフード店で見かける彼ら・彼女らは、頑張って働いてはいるだろうが、どう考えても、専門的・技術的労働者ではない。

 実は、「単純労働者は受け入れない」という外国人政策の建前は、法令上も運用上も崩れている。一般の国民の知らないところで、外国人をめぐる雇用市場は大きく変化し、日本人労働者との競合が激しくなってきているのだ。

「居住資格」者と特別永住者は、活動無制限

 日本に滞在する外国人は、出入国管理及び難民認定法(入管法)に定める27種類の在留資格(ビザ)のいずれか、または、特別永住者という地位を保有しなければならない。平成23年の全外国人登録者数は、207万8508人である(以下、統計はいずれも平成23年の数値)。観光目的などで来日し、90日以内に出国する外国人のほとんどは外国人登録をしない。よって、外国人登録者数で見る外国人の在留状況としては、就労、勉学、同居などの目的で相当期間日本に滞在し、地域社会で生活する外国人が主たる対象ということになる。

 207万8508人の全外国人登録者数のうち、いわゆる「居住資格」と呼ばれる在留資格(「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」など)で滞在する外国人が97万9687人であり、特別永住者が38万9083人である。この「居住資格」者と特別永住者については、入管法上、日本における活動範囲に全く制限がない。よって、単純労働に従事することも当然に許されている。両者だけで、全外国人登録者数の約66%を占める。

留学生も単純労働可

 次に、「留学」(日本語学校、専門学校、大学などに在籍する外国人)、「家族滞在」(専門的・技術的労働者の妻や子など)の在留資格で滞在する外国人も、「資格外活動許可」(この許可は、ほぼ無条件に取得できる)により、週28時間以内であれば、単純労働に従事することが許されている。この「留学」と「家族滞在」を合わせて30万7964人であり、全外国人登録者数の約15%を占める。外国人留学生の全てではないが、多くがアルバイトをしており、さらにいえば、少なからぬ外国人留学生が、週28時間を超過して働いているのが実態である。コンビニやファストフード店、居酒屋などでよく見かける外国人スタッフの多くは、この「留学」という在留資格で滞在する外国人である。

8割以上の外国人に単純労働を解禁

 以上のカテゴリーの外国人だけで、全外国人登録者数の約81%を占める。当然ながら、その一部には稼働年齢に達していない子どもなども含まれている。しかし、それぞれの外国人が保有する在留資格という類型でみれば、現在の日本は、外国人登録している外国人のうちの8割以上に対して、単純労働を解禁しているのである。この事実だけで、「単純労働者は受け入れず、専門的・技術的労働者のみ受け入れる」という建前が、実際には既に大きく崩れていることがおわかりいただけるだろう。

 なお、14万5382人の外国人(全外国人登録者数の約7%)が、「技能実習」「研修」という在留資格で滞在している。これは、日本で培われた技術などを開発途上国へ移転し、人材育成を支援することが目的の制度とされている。しかし、その実態は、労働力確保に悩む農業、漁業、建設関係などの現場での単純就労にほかならないとの指摘もなされているところである。

 さらに重大な問題が、「専門的・技術的労働者」の分野に潜んでいる。入国管理局は、以前から、「専門的・技術的労働者」に対して、いわゆる「就労資格」と呼ばれる在留資格(文系職種に対する「人文知識・国際業務」、理系職種に対する「技術」など)を与えてきた。

 この「専門的・技術的」と認める基準が、年々緩和され続けているのである。端的に現状を述べると、「単純労働ではない」といいうるレベル(例えば、普通の企業の経理職とか営業職)であれば、文字どおり専門的・技術的とまでは評価できなくとも、「就労資格」が認められるようになってきている。雇用でなく、派遣や請負でもよい。さらに、留学生が日本の短大あるいは大学さえ卒業すれば、学校で学んだ内容と関連性がない職種に就職する場合であっても、「就労資格」が許可されうる。専門学校を卒業した者についても、一定の要件を満たせば、「就労資格」が許可されることとなっている。自戒を込めてあえていうが、自身の経験からも、日本の大学で普通に4年間学んだからといって、それだけで特段の専門知識が身につくとは思えない。そのうえ、現在の運用だと、学んだ内容と卒業後に従事する業務との関連性すら、基本的に求められなくなっているのである。

崩壊する外国人労働政策の建前

 以上の客観的事実から明らかなとおり、「日本は、外国人について、単純労働者は受け入れず、専門的・技術的労働者のみ受け入れる」という建前は、一般の国民が知らないところで、既に大きく崩れている。多くの外国人単純労働者が懸命に働き、日本経済の下支えをしているのは事実であるし、日本人がやりたがらない仕事を積極的に引き受けているという側面もある。しかし、格差が固定し、不況が長く続く雇用市場において、外国人単純労働者が日本人労働者と競合しているのもまた事実である。

 著しく少子高齢化が進行する日本においては、労働力人口や税・社会保障費の負担主体の不足という重大問題に対する「劇薬」として、大規模な移民受け入れを求める見解がある。こうした建前の崩壊の実態をふまえた上で、一定の社会的コスト及び日本人労働者との競合を覚悟しつつ、さらに多くの単純労働者を受け入れるべきなのか、それとも、出生率の向上、女性や高齢者という潜在的な労働力の活用、労働生産性の向上、貿易自由化といった代替措置でもう少し踏ん張ってみるのか、熟慮が必要である。しかし、選択のために残された時間はあまり多くはない。
(文=山脇康嗣/弁護士)

山脇康嗣/弁護士

山脇康嗣/弁護士

1977年大阪府生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科専門職学位課程修了。東京入国管理局長承認入国在留審査関係申請取次行政書士を経て、弁護士登録。現在、第二東京弁護士会国際委員会副委員長。主要著書として、『詳説 入管法の実務』(新日本法規、単著)、『入管法判例分析』(日本加除出版、単著)、『Q&A外国人をめぐる法律相談』(新日本法規、編集代表)、『事例式民事渉外の実務』(新日本法規、共著)、『こんなときどうする外国人の入国・在留・雇用Q&A』(第一法規、共著)がある。


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