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進化する農業〜ICT駆使したスマートアグリが、アベノミクス成長戦略のカギとなるか

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「Thinkstock」より
 TPP(環太平洋経済連携協定)やいわゆるアベノミクスにより、農業分野への関心が高まっている。TPPでは農産物の輸入関税が原則としてゼロになる可能性が高く、アベノミクスでは農産物の輸出を増加させる方針を打ち出している。

 安倍政権の成長戦略では、農林水産物・食品の輸出額を現在の約4500億円から、2020年に1兆円規模にする方針を打ち出している。しかし、実現可能かどうかについては、依然として懐疑的な見方が多いのが現実だ。規制により、一般企業が農業に参入するのが難しいうえ、農業人口の高齢化が進み、立て直すのは一筋縄ではいきそうにないためだ。

 そんな中、「スマートアグリ」に対する注目度が高まっている。直訳すれば「賢い農業」だが、最新のICT(情報通信技術)を駆使した農業技術のこと。オランダがこの技術を用いて、農産物の輸出国として成長したことで注目を集めている。オランダの国土は陸地のみでは約3万4000平方キロメートルと、日本の同37万8000平方キロメートルの10分の1程度。九州くらいの大きさにすぎない。また、人口も1634万人程度と、日本の14%程度にとどまっている。にもかかわらず、オランダは米国に次ぐ世界第2位の農産物輸出国となったのである。

●ホワイトカラー化する農業の労働環境

 これを支えているのがスマートアグリだ。具体的には、ある農家のトマト栽培は高さ6メートルのビニールハウスで、大きさは東京ドームが何個も入るほどの巨大なもの。ここで光の量やCO2(二酸化炭素)の濃度、成長に応じた肥料の量の加減などをIT技術で制御する。大量の作物が均一な製品として完成する。労働者はコンピュータで制御された「工場」の状況をチェックし、やはり制御された乗車型の機械で収穫していく。これまでの肉体労働のイメージから、ホワイトカラーのような労働環境になることで、就労者の確保もしやすくなっている。

 日本では先日、都内で「植物工場・スマートアグリ展」が開催された。そこでは、例えば愛知県・豊橋市でのIGHプロジェクトが紹介されていた。IGHとは「進化するグリーンハウス」のことで、ICTを用いた栽培について経済産業省の支援事業に採択されている。光合成に必要な光や温度などを制御することで、1a当たり現行の2.5倍に相当する年間50トンのトマト収穫を目指している。この収穫量は、「オランダ基準」に相当する。

 制御はシンフォニアテクノロジー(旧神鋼電機)が行う。電力は太陽光発電や風力発電でまかなう方針。展示会ではこのほか、昭和電工の植物工場ソリューション、三菱化学の閉鎖型栽培設備(室内空間を利用した植物工場)、西松建設などのLED農園(LEDランプで抗酸化力を高めた栽培)などが関係者の注目を集めていた。

 IGHプロジェクトに関係する担当者は「収穫が増えても、国内で値段が下がっては意味がない」と指摘していた。日本でも徐々に「スマートアグリ」が進展する芽が出始めている。仮に収穫できるようになっても、海外の販路がなければ画餅になってしまう可能性がある。

 国家戦略としては、丸紅など穀物に強い商社などを通じて、販路の拡大を目指す必要がありそうだ。また、米や小麦などの穀物の多毛作化なども今後の検討課題となっているようだ。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI記者)