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斎藤知事・PR会社の報道、情報番組から突然「消えた」理由…百条委員会に不信

文=Business Journal編集部
斎藤知事・PR会社の報道、テレビから突然「消えた」理由…百条委員会に不信の画像1
「note」上にメルチュ社代表・折田楓氏が投稿した記事より

 PR会社・株式会社merchu(メルチュ)の代表・折田楓氏が斎藤元彦・兵庫県知事の知事選での選挙運動においてSNS戦略の企画立案・運用を担ったとサイト「note」上で公表し、斎藤知事の公職選挙法違反または政治資金規正法違反の可能性があると指摘されている問題。ここ1週間ほど連日にわたりテレビでもこぞって報じられていたが、なかでも力を入れて追っていた民放テレビ各局の朝の情報番組が29日、横並びで突然「扱わない」という現象が生じ、その理由をめぐりさまざまな観測が流れる事態となっている。テレビ局関係者は「27日の斎藤知事の代理人弁護士による記者会見での説明や、兵庫県議会の百条委員会をめぐる動きを受け、これ以上追うと危ないと判断したのでは」と指摘する。背景には何があるのか。

 メルチュ社の代表・折田楓氏は今月20日、「note」上に、同社が今回の斎藤知事の選挙運動の広報全般を任され、監修者としてSNSの運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定などを責任を持って行い、具体的には以下を担当したと主張していた。

・コピー考案、メインビジュアル作成、デザインガイドブック作成(選挙カー・看板・ポスター・チラシ・選挙公報・公約スライドの制作に利用)

・SNSのハッシュタグを「#さいとう元知事がんばれ」に統一

・X(旧Twitter)本人アカウント、X公式応援アカウント、Instagram本人アカウント、YouTube公式チャンネルの管理・監修・運用

 また、以下のとおり会社の業務として取り組んでいたとも綴っている。

「そのような仕事を、東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです」

「『広報』というお仕事の持つ底力、正しい情報を正しく発信し続けることの大変さや重要性について、少しでもご理解が深まるきっかけになれば幸いです」

 公職選挙法では、インターネットを利用した選挙運動を行った者に、その選挙運動の対価として報酬を支払った場合には買収罪の適用があると定められている。そのため斎藤知事が公職選挙法に違反しているのではないかという指摘が相次いだが、斎藤知事は25日の会見で、SNSの運用や企画立案をメルチュ社に委託した事実はないとし、メルチュ社からSNS運用について「ご意見はうかがったり、アイデアは聞いたりしましたけど、斎藤元彦陣営・斎藤元彦として、主体的に対応した」と説明。ボランティアで選挙運動に参加してもらっていたという認識だと語った。

 また、告示日(10月31日)前の立候補準備行為としてメルチュ社にメインビジュアル企画・制作や公約スライド制作などを委託し、対価として消費税込みで71万5000円を支払ったと説明。公示前に選挙期間中の使用が認められている文書図画を事前に制作するなどの立候補準備行為を行い、それに伴い対価を支払うことは公職選挙法上、認められている。また、公示後も選挙事務所内で事務作業をする人、車上運動員、手話通訳者、ポスター製作を委託した業者などに報酬を支払うことは同法上、認められている。

 このほか、公職選挙法では「国又は地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約を結んでいる個人・法人」は「その地方公共団体の議会の議員及び長」の選挙に関連する寄附ができないと定められており、もし仮にメルチュ社もしくは折田氏が選挙期間中に兵庫県と請負契約を結んでおり、かつ斎藤知事側への無償の選挙協力が寄附と認定されれば公選法違反となる。このほか、政治資金規正法では「会社その他の法人又は団体は、公職の候補者等に対する寄附をすることができません」と定められており、メルチュ社が法人として選挙期間中に斎藤知事側へ無償の選挙協力を行っており、それが寄附と認定されれば政治資金規正法違反となる。

「フェードアウトさせ始めている」

 以上より、斎藤知事が公職選挙法または政治資金規正法に違反していた可能性があるのではないかと取り沙汰されるなか、27日に斎藤知事の代理人弁護士は会見を開き、次のように説明した。

「(折田氏の)投稿にあるようなSNS戦略を依頼したり、広報全般を任せたりということは事実ではない」

「(折田氏の活動は)5項目以外の活動はボランティアの一員として行われたもので、報酬の約束や支払いはなかった」

「公選法が禁じる買収には当たらない」

「(折田氏のnote記事には)事実である部分と事実でない部分が記載されている。広報の現場を任せたということはない。そういう意味で、盛っているのか、盛っていないのかというと、盛っているという認識です」

 テレビ局関係者はいう。

「朝の情報番組を筆頭に各局は『違法の可能性がある』と騒ぎ立てたものの、蓋を開けてみれば、単に折田氏が自社の実績をアピールするために勝手に事実を誇張して投稿していただけで、どうやら公職選挙法や政治資金規正法に違反している事実はなさそうだということが分かり、新たな事実も出てこず、このままバッシングを続けていると、逆に世間から自分たちのほうが批判されかねないとビビったということでしょう。これ以上、この問題で斎藤知事への批判を展開して結果的にシロと認定されれば、名誉棄損になりかねないので、しれっとフェードアウトさせ始めているわけです」

百条委員会をめぐる風向きの変化

 斎藤知事への内部告発を調査する県議会調査特別委員会(百条委員会)をめぐる風向きの変化も影響しているといわれている。斎藤知事による県職員へのパワハラを訴える告発文書を受けて、県議会は6月に百条委員会を設置。翌7月には斎藤知事のパワハラや出張先などでの贈答品の受領などを告発していた県の西播磨県民局長(当時)が死亡。9月には県議会の各会派などが提出した斎藤知事の不信任決議案が全会一致で可決され、失職した。

 一方、百条委員会の進め方に対して疑問も広まっている。10月25日に行われた片山安孝前副知事への尋問では、片山氏が告発者である前出・元局長が公用パソコンに保管していたとされる私的情報について発言を行おうとし、奥谷謙一委員長が制して一時中断。この日の百条委員会は知事選への影響を考慮して秘密会の形態で行われ、今月22日に証人尋問の映像が公開されたのだが、映像では片山氏のこの時の証言の一部音声が消されている。また、奥谷委員長の「片山氏から不規則発言があり、尋問を行うことが不可能と判断した」との発言も収められている。

 今月には片山氏と奥谷委員長のやり取りを録音した音声がインターネット上に流出し、その内容から百条委員会の公平性や透明性を疑問視する声が相次ぐ事態に発展。たとえば、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏は百条委員会が隠蔽をしているなどと批判を展開している(奥谷委員長は立花氏に虚偽の内容を投稿され名誉を毀損されたとして警察に刑事告発)。

 百条委員会は、地方自治法100条に基づき地方議会が設置する特別委員会で、その目的は自治体の事務に関する疑惑や不祥事を調査することと定められている。今回問題となっている証人尋問の公開について明確な基準はなく、各議会の裁量に委ねられている。全国紙記者はいう。

「今回の百条委員会は県議会の自民党と立憲民主党の議員が設置を求める動議を提案して可決されたもので、前回(21年)の知事選で斎藤知事を推薦した維新の会と公明党は反対しました。奥谷委員長は自民党所属であり、兵庫県議会は議会の最大会派は自民党、知事は維新の斎藤氏というかたちで“ねじれ現象”にあり、議会と知事は対立的な関係だというのが前提にあります。本来は首長などのカネや公務に関する疑惑を調べる百条委員会が、パワハラ問題の解明を目的として設置されたことには、以前から適切なのかという疑問の声があったのは事実ですし、政治的な思惑が絡んでいる臭いもします。

 そして、テレビはこれまで百条委員会の進め方に乗っかって斎藤知事の疑惑を大きく取り上げてきましたが、さまざまなことが重なり、各局の情報番組の制作陣がいったん立ち止まって冷静になるべきだと慎重になり始めたことも、PR会社の問題の報道ストップの背景にはあるでしょう」

なぜメルチュ社は疑惑を持たれる投稿を自発的にしたのか

 もっとも、もし仮に斎藤知事の選挙運動が適法だと認められたとしても、なぜメルチュ社はわざわざ公選法違反を疑われるような投稿を自発的にしたのかという疑問は残る。当該「note」記事には、メルチュ社が斎藤知事に示した提案資料の一部である「SNS運用フェーズ」の画像が掲載され、10月1日より順次「立ち上げ・運用体制の整備」「コンテンツ強化(質)」「コンテンツ強化(量)」を行うというスケジュール案が記載されていたが、指摘が出始めた後にその画像を削除するなど、不自然は動きもみられる。

「会社にとっては何のメリットもなく、その点は腑に落ちません。また、もしメルチュ社として違法行為を行ったという認識がないのであれば、会見なりを開いてきちんと説明すれば済む話ですし、会社のサイト上に経緯を説明するリリースを掲載するという手段も取れるのに、折田氏が雲隠れ状態で一切の説明を避けている点も疑問です」(全国紙記者)

 メルチュ社は21日にANNの取材に対して、「(弁護士から)『答えるな』と言われています」などとして、公の場での説明を行っていない。斎藤知事の代理人弁護士はBusiness Journalの取材に対し、「こうなってしまった以上は(メルチュ社と)連絡の取りようもないので、取るべきでもないでしょう」と連絡が取れない状態だと説明している。

(文=Business Journal編集部)

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