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東京五輪開催の前哨戦は、“密約”をめぐる猪瀬都知事-石原ファミリーの対決

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猪瀬直樹東京都知事(「東京都 HP」より)
 56年ぶりの東京五輪開催が決まって盛り上がる政官財界。経済効果は「3兆円」と、まことしやかに報じられている。インフラ整備や箱モノへの投資が増えることは確実であり、ゼネコンやその利権に群がる関係者にとって美味しいイベントであることは間違いない。

 7年後の東京五輪の「前哨戦」として今から最も注目されるのが、猪瀬直樹東京都知事vs.石原ファミリーの対決である。石原ファミリーとは、石原慎太郎前都知事の周辺を固める長男の伸晃環境相や、慎太郎氏の秘書だった鈴木重雄氏ら秘書・執事軍団のことである。最近は石原氏と疎遠になっていると囁かれる浜渦武生元副知事も、石原ファミリーに入るだろう。

 作家出身で政治的基盤の弱い猪瀬氏は、石原都政を継承する形でバトンを受け、後援会組織などの選挙対策も石原ファミリーに頼る形で当選した。そもそも石原氏が猪瀬氏に都政を禅譲した背景には2つの「密約」があると、永田町界隈では囁かれている。

 まずは、猪瀬氏の後任に伸晃氏を据えるという点だ。自民党が野党の谷垣禎一総裁時代に伸晃氏は幹事長を務めたが、総裁選で谷垣氏を支えずに裏切ったことで現代版「明智光秀」のレッテルを貼られ、政治家しての信用を失い、人間性にまで疑問符が付けられ、国政ではこれ以上の上がり目がない。このため、猪瀬氏が2期8年2020年春まで都知事を務めて東京五輪の準備を万端に進め、いざオリンピック開催時の都知事は伸晃氏に譲って花を持たせるという筋書きである。

 小選挙区選出の代議士にとって選挙区が「領国」であるのと同様に、石原家にとって東京都は同じく「領国」であって代々継承されるべきものとの考えがあるようだ。東京都は日本の首都であり、日本が没落気味とはいえ、まだ情報と金が集まる。財政も地方都市に比べれば潤沢で、外郭団体や特別会計が多くあり、いわゆる「打ち出の小づち」には事欠かない。「利権」だらけなのである。「そこに絡む金や人事にまつわる話は、今でも石原ファミリー関係者が牛耳っている」(ジャーナリスト)とされる。そしてもうひとつの「密約」は、猪瀬氏はその利権に手をつけないということである。猪瀬氏は、石原ファミリーにとっては「代官」にすぎない。

●石原伸晃氏への都知事ポスト継承はほごか?

 猪瀬氏はベストセラー作家であり、印税で余裕の生活が送れる。最近の作家としての行動パターンは、政治問題について積極的な批判や意見を展開し、そこで目立つことで権力者に食い込んでいくというものである。その典型的な行動が、『日本国の研究』(文藝春秋)などで日本の利権社会を批判して名声を売り、小泉純一郎内閣時代の01年には行革断行評議会のメンバーに選ばれ、翌年には道路関係4公団民営化推進委員会委員に就いたことであろう。当時の行革担当大臣は、初入閣した伸晃氏。そして伸晃氏は横滑りで道路公団担当の国交相に就任した。「この間に猪瀬氏は、したたかにも伸晃氏との関係を構築し、石原ファミリーとの結節点を築いた」(政治ジャーナリスト)とみられている。こうしたプロセスを経て、「作家友達」という表面的理由で副知事のポストを得た。

 猪瀬氏が猟官活動に長けた作家であることには間違いないが、その背景にあるのは「名誉欲」である。信州大学卒の猪瀬氏は、学歴にかなりのコンプレックスを持つといわれる。そのコンプレックスを打ち消すためにも、ちやほやされる都知事の椅子は放したくないのが本音だろう。石原都知事時代は五輪開催地に立候補してリオデジャネイロに敗れているが、猪瀬氏にとって今回東京五輪開催を獲得できたのは、自分の実績であるとの思いが強い。だから当然、開催の時の知事は自分だと考えているだろう。

 猪瀬氏は名誉欲もさることながら、非常に鼻っ柱も強い。すでに都議会のドンと呼ばれてきた実力者、内田茂都議との関係もこじれ、都議選では内田氏の対立候補を猪瀬氏は応援した。猪瀬氏の性格から想像しても「密約」通りに伸晃氏に都知事の座を明け渡すとは到底考えにくい。東京五輪開催決定と同時に、すでにバトルは始まった。
(文=編集部)