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“日本独自料理”ナポリタン、なぜ秘かにブーム?専門店も人気、各地域で独自の進化も

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(「写真素材 足成」より)
 ナポリタンという、ある意味地味なメニュー。それが今再び脚光を浴びている。「日経トレンディ」(日経BP社/7月号)で発表された2013年上半期ヒット商品ベスト30で、なんと25位にランクインしたのだ。25位と侮るなかれ。

・1位:アベノミクス消費

・2位:パズドラ

・3位:Nexus 7&iPad mini

など、上位は今年の話題になったものばかり。その中で飲食・料理関係というと、

・5位のフィリップス ノンフライヤー

・7位のコンビニコーヒー

・20位の鍋キューブ

・22位のブレンディ スティックティーハート

などが並び、その中での25位なのだ。

 近年、じわじわとナポリタンの人気は再燃の兆しを見せていたが、昨年の後半からナポリタンは小さなブームになりつつある。テレビやネットでナポリタンのおいしい店が紹介され、食の専門誌「dancyu」(プレジデント社/12年10月号)でもナポリタンの特集が組まれた。

 また、今年大ヒットした連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)第83話で、主人公アキの母・春子(小泉今日子)の「ナポリタンはアバズレの食べ物」というセリフが話題を呼び、さらに脚光を浴びた。

 こうしたブームを受けてか、ナポリタンを提供する飲食店が増えているようだ。例えば、4年前に都内にナポリタン専門店としてオープンしたパンチョは、いまや6店舗を構えるまでに急成長。同店では、小盛(300g/650円)からナポリタン星人(1500g/1650円)という大食いの人も大満足の量のメニューまで揃え、新しいファーストフード店として人気を博している。

●中高年には懐かしく、若者には新しい

 イタリア・ナポリの料理スパゲティナポレターナを模して、昭和10年代に日本で発祥し、日本各地で独自の発展を遂げ、海外では決して食べることができないナポリタンというメニューがなぜ、こうまで人々の心をつかむのだろうか?

 東京・千代田区神田神保町にある某洋食店。昼飯時になると、OLだけではなくスーツを着たサラリーマンが大勢食事をしている。少し待ってようやく席に案内され、メニューを開く。ハンバーグやオムライスと並列の定番メニューであるナポリタンを注文。650円也。

 ハンバーグもいいが、セットでサラダやライスを頼むと、ランチとしては少々高くつく。しかしナポリタンなら単品で満足することができるため、安くあがる。実際、周りでもナポリタンを注文している人が大勢いた。昔ながらのケチャップ味、ベーコンとマッシュルームの入ったナポリタンを食し、店を出る。

 こうした風景が、都内のいたるところで、毎日のように繰り広げられているのだろう。

 実際に、この洋食店でナポリタンを食べていた人に、その魅力を聞いてみた。

「今日はスパゲティを食べたいと思っても、おじさん一人でパスタ店に入るのは抵抗がある。その点、洋食屋なら気軽に入れるし、そこでスパゲティといえばナポリタンでしょう」(40代・男性)

「肉料理ほど重くないし、昼食に食べるにはバランスが良い」(30代・女性)

「気取らず、このケチャップ味で懐かしい味が、ついついまた食べたくなってしまう」(50代・男性)

●日本で発祥し、独自の発展を続けるナポリタンの魅力

 このように、気取らなさ・手軽さ・懐かしさ、などが見直されているのだろう。さらにボロネーゼやアラビアータ、ペペロンチーノなどに慣れ親しんだ若い人にとってケチャップ味のナポリタンは、ある意味、目新しい存在なのかもしれない。その結果、単体料理としてのナポリタン人気が再燃しているのだ。

 東京・港区で30年近く喫茶店を経営する店主に聞いたところ、「高度経済成長期にはどこの喫茶店でもあった軽食の代表ともいえるナポリタンだが、いつしか注文する人が減って寂しく思っていたが、去年ぐらいから売り上げが増えてきている」という。

 新潟では焼きそばにトマトソースをかけた「イタリアン」、静岡県富士宮市では「つけナポリタン」、名古屋では卵と合わせた「イタリアンスパゲティ」など、地域独自の進化をしているところもある。

 日本パスタ協会のHPでは、おすすめのナポリタンレシピがいくつか紹介されている。ナポリタン発祥の地といわれる横浜に本部を置く日本ナポリタン学会認定店のナポリタンも、それぞれの店で個性がある。料理レシピ投稿サイト「クックパッド」で「ナポリタン」を検索すると、3000近いメニューが出てくる。

 イタリアンから進化し、日本で独自の進化をしたナポリタンは、日本人の舌になじみやすく定番でありながら、アレンジしやすく常に新しい、それが根強い人気を支えている、そんなメニューなのかもしれない。
(文=斉藤永幸)