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日本企業に広がる中国撤退気運〜人件費・政治リスク上昇で迫られる、アジア戦略の見直し

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中国・上海(「Thinkstock」より)
 中国共産党の第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が11月12日に閉会した。中国の長期的な政策方針を決めるこの会議は9日から4日間続き、最終日には討議内容を総括したコミュニケが発表された。

 審議・採決されたのは「中国共産党中央の改革の全面的深化における若干の重大問題に関する決定」というもので、「小康(ややゆとりのある)社会を全面的に実現し、富強・民主・文明・調和の社会主義近代化国家を建設し、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現する」ための“改革の全面的な深化”が謳われた。

 全面的というだけあって、その内容は多岐に渡る。次の文章が象徴的だ。

「全体会議は、改革の全面的深化に対して系統的な配置を行い、基本的な経済制度を堅持・整備し、近代市場体系の整備を加速し、政府の役割の転換を加速し、財政税制体制改革を深化させ、都市と農村の発展が一体化した体制・仕組みを整備し、開放的な経済新体制を構築し、社会主義民主政治制度の建設を強化し、法治中国の建設を推進し、権力行使の制約と監督の体系を強化し、文化面での体制・仕組みの革新を推進し、社会事業の改革・革新を推進し、社会管理体制を革新し、エコ文明制度の建設を加速し、国防と軍隊の改革を深化させ、改革の全面的深化に対する党の指導を強化・改善することを強調した」

 そして、「改革の全面的深化のための指導グループ」を政府ではなく、党に新設することとなった。国家の上に党がある中国において、党主導の組織となるということは、権限を持つということだ。少なくともかたちだけの対応ではないということだ。

 三中全会開会直前の10月28日には、天安門広場でウイグル族出身者による自動車爆破事件、11月6日には山西省の省都・太原市の省共産党委員会ビル前で連続爆発事件が発生した。場所は離れているが、ともに中国共産党を象徴する場所での事件だ。中国の権力の中枢である共産党に対して、直接行動が行われたのだ。今回の三中全会で「指導グループ」が党に置かれたことは、毎年20万件近く起こるとされる中国国内での暴動を抑えるためには、党も変わらないといけないという危機感の現れだとの見方もある。

●中国撤退を検討する企業増加の背景

 さて、三中全会が閉会し、中国は今後どうなるのか?

 日本は、隣国であり経済大国でもある中国との関係を無視するわけにはいかない。だが、中国の反日暴動や経済状況、人件費の高騰などによって、中国からの撤退を検討する企業は増えてきている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)のレポートによると、ビジネスの縮小、撤退を検討している企業は2010年12月の調査では1.9%だったのが、13年8月には7.7%と増加している。その理由として最も大きかったのは、「カントリーリスクの高さ」(32.0%)を上回り、「生産コストなど製造面で他国・地域より劣るから」で52.0%だった。

 また中国におけるビジネス上のリスク・問題点でも、「政情リスクに問題あり」(55.5%)「人件費が高い、上昇している」(55.3%)と高いが、人件費の上昇リスクは13年1月時点では37.5%だったのが、8月には55.5%と急上昇している。

 中国の政情不安がしきりに喧伝されているが、企業にとっては政治リスク以上に人件費の高騰のほうがリスクとして急浮上しているのだ。

「中国でビジネスすることの唯一の利点は、人件費が安いことでした。しかしジェトロによると、この10年で米ドル換算で約3倍に膨れ上がってきています。つまり、中国でのビジネスにはお得感はなくなってきているんです」