NEW

大学の笑えない惨状~法学部凋落、私立の半数は定員割れ…学生の質の低下も拍車か

【この記事のキーワード】

,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「Thinkstock」より
 アジア、イノベーション、キャリア、グローバル、コミュニケーション、コンテンツ、サービス、ソーシャルワーク、デザイン、ビジネス……これらは大学の新設学部の名前に使われることの多いカタカナワードだ。カタカナを使用する学部名は、1991年に芝浦工業大学がシステム工学部(現・システム理工学部)を新設して以来、爆発的に増えて、2012年には94学部に及んでいる。

 社会の高度化、多様化に合わせて学部が新設された上に、少子化による大学全入時代を迎え、響きのカッコ良さで志願者を集めようとカタカナ学部が急増したのだ。

 ところが、こうした傾向を見直す動きがあるという。

 いざ就職活動を迎えると、PRできるはずのカタカナ学部名が学生の足かせになってしまう。企業の人事担当者の「その学部は何を学ぶのか」「今までの学部とどう違うのか」などといったツッコミに就活生が対応できず、しどろもどろに。このために内定が取れず、肝心の就職率が一向に上がっていかない。就職率の上昇が受験者数の上昇に直結する大学にとっては、死活問題というわけだ。

●就職率の高い理系が人気、落ち目の法学部

『笑うに笑えない 大学の惨状』(安田賢治/祥伝社新書)では、こうした大学と学生のあまりにもトホホなキャンパス事情が紹介されている。安田氏は各種進学情報誌を発刊する大学通信の情報調査・編集部ゼネラルマネージャーで学校経営の内情に詳しく、経済誌の大学特集などではおなじみの人物だ。

 大学を取り巻く現状を見ると、不況下でも就職が堅い理系学部の中でも、医・薬・歯学部が人気だ。医療系学部の人気を反映して、大学の看護学部(学科)が急増している。看護師は慢性的な人材不足の職種であり、不況でも就職状況は堅調で、受験生には人気が高い。専門化の傾向もあり、以前は短大や専門学校が担っていた看護師の育成も、この20年で大学が担うようになった。
1992年には9大学にしか設置されていなかった看護学部(学科)は12年には180大学。この20年でなんと20倍に増えて、14年には200大学を超える見込みだという。

 医療系学部は、看護学部(学科)のほか、リハビリテーション系や鍼灸師・整復師など、受験生のレベルによって目指すべき学科も幅広い。受験生を集めたい大学側にとっても手堅く始めやすい(ただし、労働環境が厳しい福祉系は人気がない)。

 対して文系は、国際系学部に人気が集まり、法学部の地盤沈下が激しいという傾向が目立つ。国際系学部は、以前から東京外国語大学、国際基督教大学、上智大学などで人気があったが、2000年代に入り、授業がすべて英語で行われる国際教養大学(秋田県)や立命館アジア太平洋大学(大分県)の開学、早稲田大学、法政大学、明治大学、立教大学、関西学院大学、同志社大学などで国際系学部の新設が相次ぎ、グローバル化の波に乗って就職率も高く、人気を集めている。

 一方、法学部は法科大学院などの新司法試験制度の導入で、法曹への道が険しくなった上、「弁護士になっても仕事がない」と学生が敬遠するようになったため、人気が落ちている。

●大学は学生の確保に必死、学生の質は低下

 12年、定員割れの私立大学は45.8%にも達している。しかも、18年には一段と18歳人口が減少する「2018年問題」を迎えるために、大学はあの手この手を使って生き残りに必死だ。

 高校時代にスポーツで活躍した学生を学費免除の特待生で入学させ、野球、サッカー、ラグビー、駅伝などで活躍させ、大学名を宣伝する大学。古い校舎を、パウダールームなどを設置した女子が過ごしやすいキャンパスに建て替え、フレンチレストランまで設置する大学。全教職員が手分けして、全国に4500校ある高校のうち1600校を回って、進路指導教諭に魅力をアピールする大学と、なりふり構わぬ作戦を展開している。

 しかし、大学の努力の末、受験してくる学生はといえば……「5+2×2-6÷3=7」といった四則計算ができない、入学願書の記入や不明点の大学への問い合わせを母親任せにする、AO(自己推薦)入試のエントリーシートでアピールされるのは「ボランティア経験」ばかり、さらにせっかく入学してもすぐに不登校・ひきこもりとなるなど、質の低下を指摘する声が多く聞かれる。

文部科学省の助成金や学費の関係から、大学側は、できるだけ中退者を出さないようにするために家庭訪問など対応を迫られる。そんな学生にも4年後には就職が待ち構えており、マンツーマンでの就職指導を余儀なくされるなど、大学にとっては笑えない現実が続くのだ。
(文=編集部)