NEW

学習塾大手リソー教育、なぜ粉飾?高まる業界再編機運~厳しい環境で急成長路線があだに

【この記事のキーワード】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「TOMAS HP」より
 個別受験指導塾・TOMAS(トーマス)などを展開する東証1部上場の学習塾大手・リソー教育は、粉飾決算の責任を取り、伊東誠社長(50)が引責辞任した。伊東氏は昨年9月、社長に就任したばかりだった。伊東氏のほか、教務担当の赤尾光治常務と子会社・名門会の大森喜良社長もそろって退任。創業者で会長の岩佐実次氏(64)が社長を兼務し、月額報酬4カ月分を自主返上する。

 リソー教育で粉飾決算疑惑が持ち上がったのは昨年末。同社は12月16日に会計処理の疑義を調査するため、元名古屋高等検察庁検事長の高野利雄氏など4人で構成される第三者委員会を設置した。第三者委は今年2月10日、本体を含めたグループ3社で2007年度から6年半の間に売り上げを計83億円水増ししていたとする調査結果を公表した。リソー教育はTOMASを首都圏で70校、講師を派遣して個別指導を行う名門会を全国で40校展開しているほか、小学校、幼稚園受験の伸芽会も運営する。

 第三者委の調査によると、TOMASでは生徒が欠席したにもかかわらず授業を受けたかのように見せかけ、講習料を返金せずに売り上げに計上。名門会でも無料で行うサービス授業を通常の有料授業としていた。売り上げ目標を達成するために、常務ら複数の幹部が不適切な会計処理を指示していたという。社員には厳しいノルマが課せられ、ノルマが未達だと降給・降格はもちろん、ペナルティ教育が課せられており、3カ月ごとの信賞必罰の人事異動も行われていた。

 第三者委の調査結果を受けてリソー教育は2月14日、08年2月期以降の有価証券報告書などの訂正報告書を提出した。13年2月期の連結決算の売上高を217億円から198億円に、純利益は15億円から2億円に、純資産は56億円から7億円に下方修正した。13年3~11月期連結決算は売上高が141億円、最終損益で15億円の赤字となった。14年2月期の連結業績予想は公表しなかった。

 第三者委は粉飾について「大規模で全社的に不適切な会計処理を行った」と批判。岩佐会長の売り上げ重視の経営方針が事件の底流にあったことや、過去に監査法人から会計処理の不適正ぶりを指摘され、会長が再発防止を約束したにもかかわらず実行されなかった事実を指摘した。

 証券取引等監視委員会は、金融商品取引法違反(有価証券報告書等の虚偽記載)で同社に課徴金を科すよう金融庁に勧告する。今後、上場廃止問題や、オーナーである岩佐会長の進退問題に発展するのは避けられそうもない。

 株価は2月第3週の週間で42%下落。14日には283円をつけ、株式分割考慮後の昨年末安値を2日続けて更新した。10日午後には一時、報道の事実確認をするため売買停止になった。「塾のイメージが悪化し、入塾者が減少する可能性がある。当面、株価の反発は望めない」との見方が市場では支配的だ。

●急成長支えた厳しいノルマ主義

 岩佐氏は1949年5月、滋賀県生まれ。75年早稲田大学第一文学部心理学科を卒業後は、新日本教材など教材会社を経て36歳で起業。85年に日本教育公社(現リソー教育)を設立し、集団指導という塾の定番ではなく、マンツーマンの個別指導を受験業界に導入し先駆けとなった。「1対1の個人授業システム」が評価され98年、日本証券業協会に株式を店頭登録。01年に東京証券取引所第2部に上場、翌02年には東証第1部に昇格した。

 リソー教育は難関校を目指す成績上位者を中心に完全マンツーマンの個別指導TOMASを展開し、授業料は年間80万円以上と高額だが、首都圏の受験生を持つ親たちに知られる存在となった。08年から会長に就任した岩佐氏は、発行済み株式の32.9%を保有するオーナーとして経営の舵取りを担い、高い授業料に特化した経営で「13年2月期まで27期連続の増収を達成した」と謳っていた。

 岩佐氏が右肩上がりの業績達成を至上命題としていたことから、経営陣は何がなんでも増収・増益を続けなければならないというプレッシャーの中で、売り上げの水増しという不正会計に手を染めたというのが真相だ。

 14年2月期に過去最高益更新の見通しを会社側が明らかにした13年5月20日には、株価は1144円の高値をつけたが、粉飾決算を公表した今年2月14日には283円まで暴落した。1年前の高値の約4分の1の水準だ。粉飾決算と株価暴落は、オーナーの岩佐氏が自らまいた種ともいえる。

●高まる業界再編機運

 学習塾をめぐる経営環境は厳しい。少子化が進み、大学全入時代といわれる中、縮小していくパイを奪い合う状態になっている。逆風下でも好調なのは、生徒1人1人にきめ細かい指導ができることを売りにした個別指導塾だ。
TOMASを展開するリソー教育や、明光義塾を展開する明光ネットワークジャパンが個別指導で脚光を浴びてきた。明光は14年8月期の売上高が前期比3%増の164億円、営業利益も同5%増の40億円と連続最高益を更新する見込みで、16期連続で増配予定だ。

 学習塾の二極化が進む中、異業種からの進出もある。通信教育大手のベネッセホールディングスは、お茶の水ゼミナールや東京個別指導学院を傘下に収めた。学習参考書の学研ホールディングスは九州の学習塾を買収して、業界への参入を果たした。

 粉飾決算が表面化したリソー教育は、今後、学習塾業界再編の台風の目になるとの見方が早くも広まっている。
(文=編集部)

【学習塾売上ランキング(上場のみ)】
※以下、社名(本社)、売上高、展開する主要塾

・栄光ホールディングス(東京・千代田区)、424億円(14年3月期)、栄光ゼミナール
・ナガセ(東京・武蔵野市)、390億円(14年3月期)、東進ハイスクール
・リソー教育(東京・豊島区)、198億円(13年2月期修正値)、TOMAS
・市進ホールディングス(千葉・市川市)、191億円(14年2月期)、市進学院
・明光ネットワークジャパン(東京・新宿区)、164億円(14年8月期)、明光義塾
【註】リソー教育以外の売り上げは見込み。

【続報】
●リソー教育に課徴金。証券等監視委が勧告

 証券取引等監視委員会は、売上高を水増ししていたとしてリソー教育に課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告する。課徴金は4億円前後になる。売り上げの水増しがなければ、一時期、債務超過に陥っていたことを重くみて悪質性が高いと判断した。リソー教育は子会社2社と合わせて、2007年度から6年半の間に83億円の売り上げを水増ししていた。同社が2月14日に公表した有価証券報告書などの訂正報告書によると、売上高の水増し分を除くと、12年2月期は債務超過状態になっていた。この間、公募増資を行っていた。責任を取り伊東誠社長(当時)は辞任したが、創業者の岩佐実次会長が社長を兼務している。コーポレートガバナンスの観点からみて、岩佐氏の社長兼務を疑問視する声がある。