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消費増税で輸出中心の大企業はボロ儲け?中小は倒産、リストラの危機、報じないマスコミ

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「Thinkstock」より
 いよいよ4月1日から消費税が8%になる。だが、この増税が引き起こすのは「景気の冷え込み」といったレベルの話ではないらしい。

  中小企業や個人事業主はバタバタと倒産。税務署による、消費税滞納の厳しい取り立て・差し押さえを苦にした自殺者が急増する……そんな恐ろしい事態を予想しているのが、『ちゃんとわかる消費税』(斎藤貴男/河出書房新社)だ。

 本書は、消費税は悪魔であるとし、「悪魔に痛めつけられるのは、社会の中の弱い立場の人です。弱い立場の人は、多くの負担を強いられていることが多く、高い地位にある人やお金持ちに有利に働いていることがあまりにも多い」という。

 そもそも消費税は、誰が買っても税率が変わらない「消費一般に広く公平に課税する間接税」。仕入れ段階でもおカネのやりとりがあれば、一部を除いて消費税がかかってくる。それは消費者にモノを売る小売業者にとっても同様だ。例えば、小売業者は仕入れ段階では消費税を仕入先に支払い、販売時には、消費者から消費税を受け取る。単純にいえば、支払った消費税と受け取った消費税の差額を納税する。

 小売業者が確定申告した売上高に消費税率をかければ、税務署に納付すべき消費税額が明らかになる。例えば、免税事業者の免税点となる1000万円を超える売上高の小売業者(仕入れなどで消費税が発生していない単純計算)であれば、「1000万円×8%=80万円」で80万円の消費税を納付すべし、となる……税務署側にとっては簡単に徴税できる理想的な税金なのだ。

●消費税を滞納すると、税務署は厳しい取り立て

 しかし、理想と現実の間には大きな隔たりがある。

 計算上は価格の8%が消費税となっているが、すべての業者が売買時に価格の8%分を上乗せできるわけではない。業者間では消費増税分の値引きを要求されるケースも頻発するし、価格競争激化の中で小売業者が値上げするのはかなり難しいだろう。

 つまり、力の弱い業者になればなるほど、消費税分の自腹を切るしかないのだ。

 前記の例でいえば、これまでは税率5%で「50万円」だったが、税率が8%となれば、「80万円」を納付することになり、「30万円」の増税になる。売上高1000万円を超える小売業者とはいえ、その多くは人件費などの経費に消えていくため、カツカツの状態だ。仮に、赤字だろうと、消費税は納めなければならない。このため、資金繰りに苦しむ企業は、消費税の滞納額だけが膨らむことになる。

 国税庁の「平成24年度版 租税滞納状況について」を見ても、新規発生滞納額のうち、消費税の滞納が占める割合は年々増加している(約54%、3180億円)。

『ちゃんとわかる~』は、消費税を滞納した事業者への税務署等の対応について次のように伝えている。

「消費税を滞納した事業主には取り立てが行く体制が整っています。国税庁から全国の国税局へ、またさらに税務署に通達が行きました。消費税シフトです。取り立てがどんどん強まっています」

「確定申告をすると、あっという間に消費税の請求が来ます。(略)他の税金であれば、そう簡単には差し押さえに至ることもなく、多少は話し合いの余地があります。『もう少し待ってください、来月になったらお金が入りますから』などと、ひとまず相談にも乗ってはもらえる。消費税の場合は税務署の対応が半端でないそうです」

 税務署に売掛金を差し押さえられ、従業員への給料さえも支払えなくなる。仕事で使う不動産を差し押さえられ、金融機関の信用がガタ落ちに……こうして、廃業や自殺者が続出するのだ。

 えげつない消費税の取り立てから逃れようという事業者は、年間の売上高を1000万円以下に抑え、免税事業者であることを選択するようになる。従業員はリストラされ、社会保険料なども自ら負担する個人事業主化せざるを得なくなっていくのだ。

 なお、1000万円以下の免税事業者に関しては、客が支払った消費税をそのままネコババしてしまっているのではないかという「益税」問題があるが、免税事業者も仕入れ先には消費税を支払っており、ボロ儲けという批判は当たらない。

●輸出中心の大企業はボロ儲け

 一方で、ボロ儲けしているのは輸出が中心の大企業だ。というのも、「消費税輸出免税制度」(輸出戻し税)があるためだ。輸出する業者も国内の仕入先、部品メーカーから仕入れれば、消費税を払う。しかし、その商品の買い手が海外となれば、日本の消費税がかからなくなる(ゼロ税率)。このため、「仕入れのために消費税として支払ったことになっている全額を戻してあげましょう」という仕組みだ。

 この制度によって、例えば、2007年度分の消費税還付金(推計)を見れば、1位:トヨタ自動車(年間還付税額 3219億円)、2位:ソニー(同 1587億円)、3位:本田技研工業(同 1200億円)、4位:日産自動車(同 1035億円)、5位:キヤノン(年同 990億円)と大企業が並ぶのだ。当然ながら、税率が5%から8%となれば還付税額も増えることになる。

「ここで問題となってくるのは、輸出を基幹事業とするような大企業が本当に仕入先に消費税相当の金額を本体価格に上乗せして払っているかということです。圧倒的な力関係にモノを言わせて下請けを泣かせ、本来以上の値引きをさせて」いるのではないかと指摘する。

 下請けは消費者に対する小売業者と同様に、自腹を切って消費税を納めるしかない。つまり、消費税の理論は消費者や大企業にもその負担が転嫁されるという前提の下に成り立っているのだが、現実には小売業者は消費者に、下請けは元請けの大企業に消費税を転嫁できずに、自腹を切らざるを得ないのだ。

 しかし、こうした事実はマスコミに報道されることはない。財務省は法人税や所得税のように景気による変動の影響を受けることがなく、確実に税収を見込める消費税シフトを強めており、大手広告代理店を使ったマスコミへのPRに余念がない。また、軽減税率(特定の商品やサービスについて、一般より低い消費税率を適用する制度)の適用を受けたいマスコミは財務省に対し、低姿勢をとっている。

 消費税が5%に引き上げられた1997年までは2万人台前半にとどまっていた自殺者数(97年、2万4391人)は翌年、3万2863人へと激増。当時はアジア通貨危機に端を発する金融不安もあったが、消費税増税の影響も計り知れない。4月からの中小企業の悲鳴が聞こえてきそうだ。
(文=編集部)

『ちゃんとわかる消費税』


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