(「Wikipedia」より/作者:つ)
だが、消費税には、他の税金に比べ、突出して滞納額が多いという側面があることはほとんど知られていない。
国税庁が毎年7月に発表している「租税滞納状況」によると、2012年度末時点の滞納額は、法人税や所得税、相続税などすべての税目合計で1兆3617億円だったのだが、このうち実に3割に当たる4169億円が消費税だ。
さらに、12年度1年間の新規滞納発生額はすべての税目合計で6073億円だったが、消費税はそのうちの53%に当たる3220億円。同年度内に整理が完了したものは全税科目で6657億円で、消費税はこのうち3307億円。
消費税法は、1988年の竹下内閣当時に成立。89年4月1日から3%でスタートしたが、橋本内閣が97年4月から5%への引き上げを実施、現在に至る。
90年代はバブル崩壊とその後の不況ですべての税目での合計滞納税額は年々増加の一途をたどり、91年度に1兆7048億円だった滞納額は、98年度には2兆8149億円にまで膨らんだ。ただ消費税だけにスポットを当てると、92年度は1804億円で全体のわずか8.7%でしかなかった。法人税や所得税の滞納が多かったためだ。
それが97年、98年で消費税の滞納額が飛躍的に伸び、98年度に6000億円の大台に乗り、滞納額全体に対する比率も2割に達するのである。以後、01年度まで6000億円超が続き、02年度以降徐々に減り、現在の4000億円強までに至っている。
だが、滞納解消ペースは法人税や所得税に比べるといかにも遅い。中小企業の赤字の常態化で、そもそも納税義務が発生する黒字企業が減少し、法人税や所得税の申告納税額総額そのものが大きく減っていることも影響しているだろう。
結果、現在では消費税が滞納税額の3割を占めるに至ってしまったというわけだ。ここ2~3年ほどは、3000億円強の滞納が新規に発生し、解消額が新規発生分をわずかに上回るという状況が続いている。
●消費税滞納の原因は、赤字企業による消費税分のネコババ?
ではなぜ消費税の滞納解消は、なかなか進まないのか?
消費税は販売先から預かった税金を納めるという性格の税金なので、赤字が出ても払わなければならない。仕入段階で仕入れ先に消費税分を支払っているので、売上高から仕入高を差し引いた差額に5%をかけた金額が、納めなければならない消費税額になる。
だが、消費税は年4回に分けて納税するルールになっているので、売上代金を回収してから消費税の納付期限までタイムラグが生じる。この間に販売先から預かったはずの消費税分が、その会社の資金繰りに使われてしまうのだ。
半年ほど前、筆者がとある地方の中小企業経営者と世間話をしていたとき、消費税率引き上げのことが話題になった。この経営者は「今でさえ経営が苦しくて消費税を納められないのに、8%に上がったら会社が倒産する」と言うのだ。
この発言に筆者は少々かちんと来た。販売先に請求した販売代金のうち、消費税分は人から預かったお金であって、その会社のものではない。消費税を納めていないということはネコババと同じではないか。
8%に上がっても消費税を納めないのなら、今までよりも3%分多くネコババできる金額が増える。そこで、「それはネコババと同じではないか? 今ですら納められないのに8%に上がったら納めるというわけではないだろう。ネコババできる額が増えるのだからラッキーではないか」と言ったら、この経営者は「資金繰りが苦しいから払いたくても払えないだけなのに、ネコババだなんて言い方はひどすぎる。経営の苦しさなんてお前にはわからない」と言って烈火の如く怒った。
だが、消費税分を上乗せしてこの会社に支払いをしている側は、代わりに納税してもらうつもりで上乗せしているのであって、この会社の資金繰りに役立ててもらおうと思って上乗せしているわけではない。ゆえにこの行為は、どう言い訳してもネコババだ。