映画館、消費増税で据え置きと値上げの料金、なぜ混在?TOHOシネマズさんに聞いてみた
この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は放送作家の林賢一氏が、消費増税に伴う映画館の料金値上げにまつわる疑問について迫ります。
【今回ご回答いただいた企業】
TOHOシネマズ様
消費税が5%から8%に上がった。ICカードの使用に限るとはいえ、電車・バスなどの公共機関は1円単位での対応をしている。当然の話である。
問題はそれ以外の場合、いわゆる便乗値上げだ。もちろん、あからさまな便乗値上げをするところなどあるまい。途端に非難が集まるだろうからだ。
私が日頃から通っている映画館ではどうだろうか。大手の映画館は、どこも大人1800円、大学生1500円などの通常入場料金を変えずに、女性限定の割引「レディースデイ」や毎月1日の「ファーストデイ」、60歳以上の観客が対象の「シニア割引」など、これまで1000円だった割引プランを1100円にした。
ん? ちょっと待てよ。
これでは「いつも割引で観ていた人だけ増税ね」ということではないか。何か釈然としない気持ちが残る。しかもそのバランスも悪い。1000円から1100円へのアップである。本来であれば3%の増税なのに、これでは10%の増税になってしまう。これは一見すると不公平にも感じてしまうのだが、何かビッグデータ的なものを加味したうえでの値段設定なのだろうか?
そこでTOHOシネマズ 総務室様に直接聞いてみた。
「毎月1日のファーストデイ、1100円に値上がりしたのはなぜですか?」
担当者 もろもろの割引がほかにもございますが、端的に申し上げさせていただくと、消費税分のアップということで……。まぁ、ちょっと値上げさせていただいたと。そうゆうことなんですけど。
–でも、消費税が上がったのは3%分ですよね?
担当者 その分、通常の料金である一般の1800円、学生の1500円などは据え置いています。それで割引料金を若干値上げさせていただいたと。
–通常料金を据え置きにする代わりということでしょうか?
担当者 代わりというか、ええ(笑)。全部を上げないで、ということなんですが。
–ということは、普段から通常料金で観に行くお客さんのことを考えて、割引で観に来るお客さんに、その分を負担してもらうということでしょうか?
担当者 結果としてそういうことになるのかもしれないのですが。すべてを値上げすると「アップしすぎ」ということになりますから、通常料金や障害者の方の料金は据え置いてと、色分けはあるのですが。全体的のバランスというのですか。特定の人に向けて上げるとか、そのままとかの意味合いではないです。あくまで全体的な話です。
–つまり、サービスデイを上げれば、それ以外は上げなくて大丈夫ということでしょうか?
担当者 厳密な試算を1円単位までは、そこまでしてないと思いますが、バランスの中で判断させていただいたわけです。
–そうですか、わかりました。ありがとうございます。
担当者 いえいえ、説明が不足かもしれませんが、何卒ご理解いただければと思います。
というわけで結論としては「細かい計算をしていないが、全体のバランスを見て」という内容であった。全体のバランスを見る、というのは細かい計算をしないと見えてこないとも思うのだが……。今後、消費税が10%に上がる時も、そんなざっくり計算で値上がりを決めるのだろうか。とても不安である。
(文=酒平民 林賢一/放送作家、脚本)