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医師・看護師、大不足時代到来?医学部の歪んだ偏差値至上主義に異変?

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「Thinkstock」より
「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/5月17日号)は『医師看護師 大激変!!』という特集を組んでいる。「医療の公定価格を見直す2014年度診療報酬改定のタイミングで、国は重症患者向け病院の大リストラを打ち出した。医療提供体制の改革を推し進める中で、医師や看護師たちに“民族大移動”時代が到来する。果たして彼らは時代のニーズに応え、職場、働き方を変えていくのか。医師・看護師たちのリアルにとことん迫った」という内容だ。

 診療報酬とは医療サービスに対する公定価格で、医療機関の収入に直結するものだ。06年の改定では、患者7人に対して看護師を1人配置する「7対1病床」と呼ばれる、最も手厚い体制の入院基本料が1日1万5660円に設定され、多くの病院がより高い収入を得ようと7対1病床を目指し、国が当初見込んでいた4万床程度をはるかに超える36万床にまで達してしまった。7対1病床の増加のために、医師だけでなく看護師の争奪戦も過熱し、看護師不足をもたらしたほどだ。

 診療報酬の改定は2年に1度行われるのだが、今年の4月の改定で医療費抑制を目指す国は、この7対1病床の資格要件を厳格化し、2年間で7対1病床数の4分の1に当たる9万床分を削減する大リストラに乗り出したのだ。

 猶予期間である、半年後の10月までに資格要件に合わない病院は7対1病床から1段階下回る10対1病床へ運営体制のリストラを進める必要があり、減収が必至。あるシミュレーションでは、病院看護師のニーズは今後10年間(団塊世代が75歳以上になる25年まで)に14万人が減少する。一方で、超高齢社会で自宅での看取りを支える訪問看護師のニーズが増大するという。

●大学の看護系学部・学科が乱立

 同誌の注目記事は『看護受験最新事情 学歴志向で専門学校より大学 看護学科新設ラッシュのワケ』だ。現在、看護学科を新設する大学が急増中だ。看護学科のある大学は01年度に89校だったが、13年度には210校まで増加。今年4月には18校が新設。日本の大学数は782校で、全体のほぼ3割の大学に看護学科がある計算だ。「15年4月も神奈川工科大学や同志社女子大学など10校以上が看護学科開設を計画している」という。

 私立大学の4割が募集定員割れの現状で、看護学科は大学側にとってまさに救いの神。足利工業大学(栃木県)といった工業系の大学は女子を集められ、文京学院大学(東京都)など、文系学部中心の大学は就職に困らない国家資格の取得を望む女子学生を増やせるというのが狙いだ。

 受験者側も、専門学校卒よりも大学卒という高学歴・ブランドを求める傾向があり、「東京都内なら新設の看護学科でも定員の4~5倍の志願者が集まる」。現役志向と資格志向が拍車をかけ「入試難度(偏差値)が低い既設の看護学科にも学生は集まっている」。

 大学卒看護師となると、海外で働く道もある。

「米国や英国などは近年、移民を厳しく制限しているため、現地で働くのはほぼ不可能になった。しかし、オーストラリアやニュージーランドは今も看護師不足で移民を受け入れている。日本の大学卒の正看護師ならば、規定の英語力を満たした上で、大学・病院での8~16週間の講義と実習を経て、現地の看護協会の承認を受ければ、看護師として働ける」というのだ。

●ハンガリー留学から医師へ

 一方、医師の世界に新しい風が吹き込む兆しが見える。特集記事『ハンガリー留学組が国試合格 歪んだ偏差値至上主義に一石』によれば、超難関の上に、6年間の学費総額が3000万円超という日本の医学部受験に挫折したハンガリー医科大学日本人留学生が卒業後、日本の国家試験を受験し、今年3月、受験者6人中4人が合格を果たした。

 ハンガリー医科大の「学費は国内私立医学部に比べて割安で、現地での生活費込みで2000万円(予備コースを含む7年間の合計)」。合格レベルは日本の国立大学工学部並みだが、落第する学生の割合は日本よりもはるかに高い。

「1期生22人のうち、ストレートで卒業したのは7人。3分の1は留年し、残りの3分の1はドロップアウトした。医師になりたいという強い意志と適性がなければ脱落していくことになる」

 日本の医学部にストレートで入学する偏差値エリートは実は偏差値で選んだだけで、医師の仕事に興味がないという学生もいる。ハンガリー留学組の今後の活躍が、偏差値至上主義の日本の医学部に対するアンチテーゼになっていくのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)