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有機ELテレビ、なぜ普及進まず各社相次ぎ撤退?ソニーとパナ、新会社設立し売却へ

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「ソニー HP」より
 次世代テレビの有力候補と見られてきた有機ELテレビが苦戦している。有機ELテレビは電流を流すと自らが発光する有機材料を利用した技術で、液晶テレビより薄型構造を実現できるため、軽量で省エネ、高画質になるとされている。

 開発・商品化で先行してきた韓国サムスン電子は、有機ELテレビへの投資を中断し、専用パネルの量産ラインを2014年中に設置する計画も中止した。価格面などで他の薄型パネルテレビに対する競争力を発揮できないと判断したためだ。サムスン電子はテレビの世界最大手で、韓国国内に小規模なテレビ有機ELパネルの生産ラインを設け、13年6月に55型の曲面タイプを商品化した。韓国国内や米国市場に投入したが、振るわなかった。

 韓国LG電子も13年にリビング用の有機ELテレビ(55型)を6000ドル(約61万円)で発売したが、こちらも不振。

 米調査会社ディスプレイサーチによると、13年の有機ELテレビの市場規模は、わずか4400台だった。12年春時点の予測(25万台)の1.8%という超低空飛行ぶりとなった。

 販売不振の原因は価格。例えば当初サムスンが韓国で売り出した55型の価格は、1500万ウォン(約150万円)。パネル生産の歩留まりが極端に悪いため、サムスンは大規模な生産ラインの導入を取りやめ、研究は続けるが新製品を出す予定はないという。一方のLGは商品の投入は続けるものの、サムスンの投資中断の影響は大きそうだ。

 ディスプレイサーチは12年時点で「16年に1000万台」という強気の需要見通しを打ち出していたが、13年6月時点で「世界出荷台数は180万台」に下方修正した。最新の見立ては14年時点で「80万台規模」となっているが、この数字も過大すぎるとの指摘が多い。

●ソニーとパナ、量産化を断念か

 ソニーとパナソニックは12年6月、大型有機ELテレビ向けパネルの量産技術を共同開発すると発表した。しかし、テレビ事業が10年連続で赤字のソニーは、テレビ事業の黒字化を優先させ、有機ELテレビの開発を凍結した。当面、需要が見込めないという判断である。さらにソニーは13年12月、有機ELパネルの開発に関するパナソニックとの提携を解消。独自路線を選択したが、その後、有機ELパネルの開発要員を4K対応液晶テレビの開発にシフトさせた。ソニーは07年に世界で初めて11型の有機ELテレビを商品化した実績を持つが、量産化を事実上、断念した。

 パナソニックも15年度をメドとしていた有機ELテレビの量産計画を16年度以降に先送りした。印刷技術を応用した材料の塗布方式での量産を目指していたが、同方式でも製造コストが下がらず、現時点で55型の価格は100万円を切れていない。

 4Kテレビの普及も有機ELテレビの先行きを難しくしている。例えば、4K液晶テレビの大手家電量販店での価格は30~40万円まで下がってきた。価格差に見合うだけの付加価値が有機ELテレビに見出せない以上、量産化は難しい。さらに、現在の製造技術水準では有機ELパネルは大型化が難しいという問題も解消されていない。

 ソニー、パナソニックが有機ELテレビ事業から撤退する方針を固めたことから、両社の同事業の受け皿をどうするかに関心が集まっている。官民ファンドの産業革新機構が主導し、同機構が筆頭株主であるジャパンディスプレイ(JDI)を中心に開発会社をつくる方向だ。ソニー、パナソニックは有機ELテレビ事業を新会社に売却する方向で交渉に入った。6月中に基本合意する見通しだ。将来、JDIはタブレットやスマートフォンに使う中小型画面に絞って開発を進めることになる。
(文=編集部)