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自動車業界、深刻化する若手技術者不足 異例の8社共同研究、その本音と建前は?

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5月19日に行われたAICE発足式
 大募集をしてもアルバイト従業員などが集まらず、一時閉店せざる得ない居酒屋チェーン。パイロット不足で欠航が相次ぐ格安航空会社(LCC)。企業経営の屋台骨を揺るがしかねない人手不足の話題が後を絶たないが、日本経済を支える重要な基幹産業として確固たる地位を占める自動車業界でも決して例外ではない。

 中でも技術開発を担う若手エンジニアの人材不足が深刻な問題として浮上しており、国内の自動車メーカー8社は、異例の呉越同舟ならぬ“呉越同車”で多くの大学や研究機関と連携を取りながら産学官の英知を結集し、次世代エンジンの共同研究と技術系の人材の育成に乗り出すことになった。

 トヨタ自動車をはじめ、日産自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車、富士重工業、ダイハツ工業、それに本田技研工業(ホンダ)の研究開発部門を担う子会社、本田技術研究所の8社と一般財団法人の日本自動車研究所は4月、自動車用内燃機関技術研究組合(通称:AICE) を結成。初代理事長には本田技術研究所の大津啓司常務執行役員が就任した。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災の直後には、サプライチェーンが寸断され大きな被害を受けた半導体大手、ルネサスエレクトロニクスなどに自動車メーカー各社が技術者を派遣して、オールジャパンで復旧作業を急いだことがあった。だが、こうした非常事態をのぞければ、日頃、新車販売や燃費競争などでしのぎを削るライバルが利害関係を度外視してスクラムを組むことは極めて異例のことである。

 5月19日、都内で開かれたAICEの発足式には、本田技術研究所の山本芳春社長のほか、マツダの金井誠太副会長、日産の平井俊弘常務執行役員、トヨタの嵯峨宏英専務役員、自動車技術会の山下光彦会長(日産取締役)ら、各社の技術畑トップ級役員が勢ぞろいした。AICEによると、事業の目的は、内燃機関の排出ガス低減と燃費向上に向けて、後処理技術および燃焼技術の科学的な現象の解明と現象のモデル化の事業領域に関して共同で研究を推進し、その成果を各自動車会社で製品開発に反映して各社の競争力強化を図る、としている。

 具体的な研究テーマとしてはエンジンの性能の向上がメイン。2020年までにディーゼルエンジンの二酸化炭素排出量を10年に比べて3割減らす低減技術を開発するほか、ガソリンエンジンの燃焼技術向上のための高度化研究にも取り込む計画だ。

●クリーンディーゼルで先行する欧州勢に対抗

 国内では、環境対応のエコカーとしてトヨタが先行するハイブリッドカーの需要が拡大しているが、世界的な自動車市場をみると、今後もガソリンやディーゼルなどの内燃機関だけのパワートレーンが主流を占めることは間違いない。特に、ガソリンよりも廉価の軽油を燃料にするディーゼルは、排気量が同程度のガソリンエンジンより燃費効率に優れており、欧州の自動車メーカーでは早い段階から「クリーンディーゼル」と呼ばれるエコカーの開発に力を入れてきた。現在、欧州では新車台数の5割近くがディーゼル車となっているほどの人気ぶりだ。

 一方の国内市場では、かつて石原慎太郎・東京都知事(当時)がディーゼル車から採集した黒煙に含まれる粒子状物質の入ったペットボトルを、会見で振りまわすという大胆なパフォーマンスを展開したことから、負のイメージが定着した。それ以降、ディーゼル車の販売量は激減するとともに、粒子状物質や窒素酸化物などを低減するクリーン化技術への研究開発にも大きく出遅れたという経緯がある。