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『ムカつくことには合理性がある~若き老害・常見陽平が吠える』(第2回)

「学歴は関係ない」は暴論? 公平を謳う企業の採用に潜む、隠れた学歴差別の罠

文=常見陽平/評論家、コラムニスト、MC
「学歴は関係ない」は暴論? 公平を謳う企業の採用に潜む、隠れた学歴差別の罠の画像1「Thinkstock」より

●いつのまにか、学歴差別をしてないか?

「申し訳ないですが、あなたの大学からウチの会社を受けることはできません」

 新卒採用で応募した企業からこう伝えられたら、皆さんはどう思うだろうか? 恐らくカチンとくるだろう。しかし、もしあなたが採用する側に回ったら「絶対に学歴差別はしない」と言い切れるだろうか。無意識のうちに学歴差別・区別をしていないだろうか。

 もう10年近く、ネットニュース向けの記事を数多く執筆しているが、学歴ネタは必ず炎上を誘発してしまう。ただ、その記事に寄せられるコメントなどを見ると、「学歴なんて関係ない」と感情的に発言する人に限って、学歴を気にしているのではないかと感じたりする。

「ウチは実力主義で学歴は関係ありません」と宣言している企業があること自体、「ほかには、学歴差別をしている企業があるのだな」ということを予感させている。そして実は、この宣言は、学歴に圧倒的な自信はないが、そこそこ自信がある人からの応募を促すことにつながる。自分に自信のない人からの応募を排除することになる。得しているのは、応募者ではなくこの企業なのだ。

 最近では日本経済新聞などでも「学歴フィルター」つまり、学校名により会社説明会の予約が取れなかったり、選考に進めない企業の件が話題になる時代である。採用活動においては年々、ターゲットとする大学を絞り込んだ採用が行われているが、これは今に始まったわけではない。昔からこの大学名による企業の差別・区別は何年かに1回、話題になっていた。1970年代前半には指定校制度【編註:企業が採用活動時に、あらかじめ決められた大学からのみ人材を採用する制度】の問題として国会で議論されたこともある。また、数々の研究者が大学の選抜度と就職先の関係について研究してきたが、選抜度の高い大学のほうが大手企業に進むことができているという傾向は、ほぼ明らかである。「ほぼ」と書いたのは、選抜度の高い大学の中には、定員が少ない大学、民間企業への就職者が少ない大学もあるので、測定しきれないからだ。

 みんな、この学歴差別のことが少なくとも薄々気になっているのではないだろうか。就活生はもちろん、とっくに社会人になった人たちも。

●隠れた差別に気をつけろ

 
 気をつけないといけないのが、一見すると公平・平等に見える不公平・不平等だ。例えば、次のような企業の採用活動は公平・平等だといえるだろうか?

【A社の採用ポリシー】

 当社は、オープンかつクリーンな採用活動を行っています。「会社説明会の予約がとれない!“学歴フィルター”かも……」そう思った方はいらっしゃいませんか? 当社では、学生さんがそんなふうに不安にならないために、会社説明会はウェブ上で、動画で行います。地方の学生さんの負担を減らす意味もあります。また、エントリーシートは全員分ちゃんと読みますし、面接には必ず参加することができます。落ちた理由はフィードバックします。当社は選考も、入社後も実力主義で、オープンでフェアです。この環境で戦いたい、皆さんからの応募をお待ちしております。

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)後、株式会社リクルートに入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年より准教授。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。主な著書に『「就活」と日本社会』(NHK出版)や『「意識高い系」という病』などがある。
常見陽平公式サイト

Twitter:@yoheitsunemi

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