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ワタミ過労死、なぜ1億5千万の懲罰的慰謝料請求?ワタミは責任認めず、争う姿勢

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ワタミ本社(「Wikipedia」より)
 居酒屋チェーン大手ワタミの新入社員(当時26歳)が月140時間を超す残業の末に過労自殺した2008年6月の事件をめぐり、昨年12月、亡くなった社員の両親は、同社と渡邉美樹前会長(現参議院議員)らを相手取り、遺族一人につき7650万円(計1億5300万円)の慰謝料支払いを求め、東京地裁に提訴した。

 一般的に生命侵害の慰謝料の場合、遺族一人につき2500〜3000万円が相場といわれている。にもかかわらず今回の請求が通常の2〜3倍と高額なのは、ワタミに対する「懲罰的」な判決を出すことを、遺族が裁判所に求めているからだ。

 日本では聞き慣れない「懲罰的慰謝料」とは、いったいどのようなものなのか? 今回は、国を相手に勝訴した東京海上火災保険過労死裁判【編註:同社横浜支店長付き運転手の過労死が2000年、最高裁で認定】などで代理人を務め、本件でも遺族側代理人を務める玉木一成弁護士に、その法理と認められた際の影響などについて聞いた。

●日本における懲罰的慰謝料の実態

--訴状には「本件のような過労死を招来した場合に、慰謝料を含む損害賠償額が高額に認容されなければ、企業による過重労働の悪弊を抑止できない」とあります。ワタミに対する懲罰と、悲劇の再発阻止を目的に慰謝料を通常より高額にすべきであるとの主張ですが、そもそも「懲罰的慰謝料」とはどのようなものでしょうか?

玉木一成弁護士(以下、玉木) 「懲罰的慰謝料」や「制裁的損害賠償」は、基本的にはアメリカやイギリス、オーストラリアなど英米法の国で認められているものです。ただし英米法のすべての国が認めているわけではなく、アメリカの中でも規定がある州もあればない州もあります。

 原告女性が1億5000万ドルの懲罰的慰謝料を請求した北米トヨタ自動車セクハラ事件(06年8月和解)などは、日本でも比較的よく知られている裁判でしょう。

--これまでに日本国内で認められたことはあるのでしょうか?

玉木 日本における損害賠償制度は、被害者が受けた損害を元に戻す「填補」であると考えられているため、認められたケースは基本的にはありません。学会でも、制裁的損害賠償や懲罰的慰謝料を認めている法学者は現在のところごく少数派です。

--ではなぜ今回の提訴では、あえて懲罰的慰謝料を請求されたのですか?

玉木 たしかにこれまでの判例などからは、日本の裁判所が懲罰的慰謝料を正面から認めるのは難しいのですが、被告の犯した行為がきわめて悪質だったり交渉態度が誠意を欠いている場合は、これにより被告が「いっそうの精神的苦痛を受けた」という理由で慰謝料の増額を認められるケースがあるからです。交通事故をめぐる慰謝料請求でも多いですし、02年に三菱自動車製大型トレーラーのタイヤが脱落し、直撃を受けた母子3人が死傷した事故では、07年、死亡した主婦の母親が起こした裁判で、多額の慰謝料支払いを最高裁が認めました。