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アベノミクスで急速に悪化する経済 伸びない輸出、実質賃金低下、消費増税でさらに悪化

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
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アベノミクスで急速に悪化する経済 伸びない輸出、実質賃金低下、消費増税でさらに悪化の画像1安倍晋三首相(「首相官邸 HP」より)
 2012年末に発足した第2次安倍内閣は“2つの性格”を持っている。発足当初はアベノミクスと呼ばれる経済政策に象徴されるように、異次元緩和の必要性を唱える黒田東彦氏を日本銀行総裁に起用し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉へ参加するなど、その政策は経済・景気対策を中心に進められた。

 そして、アベノミクスはデフレ経済脱却の旗印の下、経済実態は伴っていないもののインフレ期待をつくり出し、日経平均株価の上昇と円安を実現した。

 しかし、13年秋以降、安倍政権は「政治」内閣へと性格を変えた。特に、集団的自衛権の解釈変更、特定秘密保護法制定、日本版NSC(国家安全保障会議)の創設など、一部から右翼的との声がささやかれるほど政権の性格は変貌した。

 ところが、消費税率を10%へ引き上げるか否かの判断を控えて9月3日に行われた内閣改造により、再び経済・景気対策政権に戻ったようだ。改造後の記者会見で安倍晋三首相は「景気回復軌道をより確かなものとし、その実感を必ずや全国津々浦々にまで届けることこそが、次なる安倍内閣の使命」と述べている。

●増税で景気が悪化する前が転職の好機

 安倍首相が安全保障問題から景気対策へとモードチェンジを行うきっかけになったのは、8月13日に公表された4-6月期のGDP(国内総生産)が前期比年率7.1%減と大幅なマイナス成長となった上、一時落ち着いていた円安の動きが急激に進み、1ドル=109円台となったことだ。

 経済の減速と急激な円安は、(1)海外生産が進んでいる日本の輸出産業にとって、円安による輸出数量の増加に結びつかなかったことを露呈し、(2)円安による輸入物価の上昇がコストアップにつながり、(3)企業収益が増えても、十分には賃金に反映されず、(4)結果的に消費税率引き上げとあいまって、実質所得の低下を引き起こした――この結果、景況感は急速に悪化し始めている。

 政府はついに、9月の月例経済報告で基調判断を「このところ、一部に弱さもみられる」と下方修正し、個人消費の評価を「持ち直し」から「足踏み」に変更した。

 このような状況下であっても、安倍政権としては国際公約としている消費税10%を実施する可能性が限りなく高い。そうなれば、今年4月の消費税率引き上げ時と同様に、景気が悪化に向かうだろう。当然、景気の腰折れを防ぐため対策を打ってくるだろう。場合によっては、黒田日銀がさらなる金融緩和を実施してくるかもしれない。もしそうなれば、景況感の悪化が一時的にでも和らぐ可能性はあるといえる。しかし、増税が決まれば先行きの不透明感は増し、社会に不安が高まると考えられる。

 さて、今のところアベノミクスによって景気回復が実現したとはいえないが、期待感を高めたことは間違いない。昨年11月から求人数が求職者数を上回り始め、今年7月には有効求人倍率(求職者数と求人数の比率)が1.10倍(東京だけなら1.62倍)となった。理論上は、仕事を求める人のすべてが職に就ける。特に東日本大震災以降は、土木・建築・ドライバーなどの、いわゆる“ガテン系”企業の人手不足は深刻で、「売り手市場」の状態になっている。

 就職・転職を検討している人にとっては、今が絶好のタイミングといえるだろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

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