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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(10月6日)

深まるアマゾンvs.欧州の構図 文化保護や租税回避めぐる対立、妥協しないアマゾンの勝算

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通販サイト「amazon.co.jp」より
 世界中の小売業が“大魔神”アマゾンに押しつぶされるのではないかと戦々恐々としているわけだが、ヨーロッパではこの大魔神に対抗して戦いを挑んだりもしている。今回は、そんな動きを簡単にまとめてみたい。

●フランス


 なんといっても、「やっぱり文化の国だ」と再確認させられたのがフランス。アマゾンの市場参入は2000年。同国における売り上げは明らかではないが、書籍のインターネット販売全体の約70%を占め、すでに4つの物流センターを開設している。同国ではネット販売のせいで毎年数百の書店が消えているが、書店がつぶれるということは同国固有の文化がなくなることを意味するとして、政府がアマゾンの活動を規制する法律を14年1月に成立させた。アマゾンが書籍を安売りしたり、配送料無料にしたりすることを禁じたのだ。

 ヨーロッパの国々とアマゾンとの戦いは、ビジネス的な側面もあるが、それと同じくらい文化的な要素もある。書籍と書籍を売っている場である書店は、フランスにとっては文化そのものだとみなされている。グローバル化によってフランスの文化が、例えばハリウッド映画や英国の音楽(ロック)によって荒らされるのを嫌い、自国の芸術や文学に対しては例外として補助金や税務上の優遇措置をとっているお国柄だ。アマゾンが市場に参入する以前のすでに1981年には、小さな書店を大きな書店チェーンから守るために5%以上の割引を禁じた法律をつくっている。

 フランスには約3000店の独立書店があり、これは国民2万2000人に書店1店の割合だという。ちなみに、アメリカのアマゾン本社のあるワシントン州では7万人に1店。日本では14年5月現在で書店数は1万3943店あるから、9000人に1店くらいのようだ。ただし、この数字には大手チェーンの店舗数も含まれているかもしれない。ちなみに、アマゾンが日本市場に参入したのは00年だが、前年の1999年の書店数は2万2296店で、これが14年には1万3943店にまで減っている。15年で8353店、毎年平均550店以上が閉店したことになる。

 前述したアンチ・アマゾン法と一般的に呼ばれるこのフランスの法律が、独立書店を守ってくれるとは楽観できない。実際にアマゾンはその後、配送料をほぼ無料である0.01ユーロにすると発表した。

 楽観できない理由はもう一つある。フランスの国民は自国文化を守ることには心情的には賛成でも、実際には便利さを選んでしまうだろうとみられている。書店に行って目当ての本がなければ、自宅に戻ってアマゾンで注文してしまう。顧客なんて「不実な愛人みたいなものだ」と書店店主はフランス的なメタファーを使って、アマゾンは今後も成長していくのではないかと憂えているそうだ。