そこで今回は、ぼったくり居酒屋を人事的な視点から読み解いてみたいと思います。
●脱ぼったくりへの道
例えば、風物語を脱ぼったくりの道にいざなうとした場合、どのように人事制度を見直すべきでしょうか? 一般に評価制度というのは、その企業がどういう価値観を根底に持っているかで評価基準を決めるものです。例えば、利益重視の企業であれば売り上げが重視され、CSR(企業の社会的責任)を重視する企業であれば目標管理に必ず関連した項目が入っているものです。
ある意味、風物語を運営する海野屋の評価システムは究極の売り上げ至上主義ともいえるので、そこから脱却を図るのであれば、顧客満足度を評価の柱に据えるべきでしょう。すなわち、売り上げノルマを廃止した上で、毎月もしくは半期ごとの目標管理制度を実施し、各店長については、売り上げ目標数値と合わせて、顧客満足度アンケートの結果とクレーム発生率も加味した査定を行います。
仕入れや大まかなメニューのラインナップは本部で決めるにしても、実際に店舗で調理して高付加価値のサービスを提供するのはスタッフです。それなりのスキルを持った人材を採用する必要があるのは言うまでもありません。店長は彼らのマネジメントをしつつ、売り上げと顧客満足度の両輪をうまく回さなければなりません。
もちろん、最も変わらなければならないのは運営会社そのものです。恐らく今まで彼らが行っていた“経営”なるものは、粗悪な食材を底値で仕入れて各店舗に流しつつ、厳しい売り上げノルマを課しているだけだったのでしょう。それを一新し、顧客満足度向上につながる食材を低コストで確保し、各店舗の手綱を握らないといけないわけです。
しかし、同業にはリピーター確保に血道を上げる無数のライバルたちもひしめいています。仮に海野屋の社長が改心したとしても、同社がこの路線で再生するには、それこそ社員とアルバイトを総入れ替えするくらいの覚悟が必要でしょう。
●ぼったくり化する社会
筆者はこれからの日本では“ぼったくり”が重要なキーワードになるとみています。なぜなら、時代のトレンドが大きく変化したからです。