最も貢献度が高いのは、7月にオープンした新エリア、ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターで(以下、ハリー・ポッター)、開園以来最大の450億円を投じ「テーマパークの中に、もうひとつのテーマパークを作った」とUSJ関係者が胸を張るほどだ。このハリー・ポッター建設の推進役で、USJのV字回復仕掛け人であるチーフ・マーケティング・オフィサーの森岡毅氏も注目を浴び、14年2月に発売された同氏の著書『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(KADOKAWA)も一時、ベストセラーランキングにランクインしたほどだ。9月にはテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)でも「ナニワの軍師」として取り上げられ、「マーケターとは客の心をつかむ科学者。数字を元に戦略を構築する。会社を勝たせる仕事」などと、自らのマーケティング理論を語っている。
●金儲け主義のUSJに批難の声
しかし、こうしたUSJ流のマーケティングに疑問を呈するマーケターも多い。それは顧客を楽しませるためのテーマパークにしては、金儲けを前面に出しすぎではないかということだ。実際にUSJに行き調査したマーケターは、次のように語る。
「本来、こういったエンターテインメント施設では、来場客にいかに楽しんでもらうかがマーケターにとっては大事で、利益はそのあとについてくるものです。しかし、USJの場合は儲け至上主義が前面に出ています。例えば、年間パス。1日券(1デイ・スタジオ・パス)が大人料金で6980円なのに対して、年間パス(ユニバーサル年間パス)は1万9800円と格安で、3回で元が取れる計算です。スタジオ内で1日券を利用中にも年間パスへ変更可能で、なるべく年間パスを購入してもらうように勧めています」
USJのライバルとされる東京ディズニーリゾートの1日券(1デーパスポート)は6400円、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2パーク共通年間パスポートは8万2000円という価格設定で、13回行かないと元が取れないのとは対照的な戦略だ。
USJのホームページを見ると、「数量限定になりました」との文句で購入を煽ろうとしている。なお、年間パスの価格は14年3月に2万7000円から改定されたが、実はその直前にはキャンペーンとして1万5800円で販売されていた。それに比べると、実質4000円の値上げになるが、それはハリー・ポッターの投資資金450億円を回収するためのものであると同時に、スタジオ内の混雑緩和が目的とされていた。