●福岡社屋の建設延期
福岡市は昨年、国家戦略特区、創業特区に選定され、多くのIT企業が拠点を置き始めている。そうした中でLINE株式会社は、シンボルとなる自社ビルの建設に動きだした。着工前に「LINE Fukuoka はじまる。」と銘打ち、大々的なイベント開催や博多ファンミーティングなどを実施する力の入れようだった。現在、LINE Fukuokaは九州地区に居住するIT人材やLINEサービスのバックヤードオフィスとしての役割を担っている。しかし、中核拠点にする予定だったビルが突然の建設延期となった。
LINE株式会社の発表によれば、「昨今の建設費の高騰が要因」だという。しかし、建設予定地を確保し、500人を超える社員も獲得できている状況にあって、そもそものビル建設の資金が捻出できないというのは、とても奇妙な話である。同社は「白紙には戻っていない」と強調しているが、建設されるかどうかは未定だ。延期となった要因は、建設費捻出の当てにしていた上場が決まっていないことが最も大きい。
●上場への足かせとなるサービス
そうした逆風の中、森川社長からバトンを受け継ぐのは出澤剛代表取締役・COOである。07年、新ライブドアの社長に就任し、昨年LINE取締役最高責任者に就任、今年4月から社長に就任する予定だ。LINEのみならず、多くのサービスにおける責任者として手腕を発揮している。しかし、ライブドア出身であるがゆえに、上場において足かせになるのではないのかとの意見も出ている。
ライブドアが運営していた「livedoor Blog」というブログポータルサイトは、同社を買収したLINE株式会社が引き続き運営しており、広告収入で収益を得ている。しかし、「livedoor Blog」においては一般的なユーザーだけではなく、2ちゃんねるまとめブログやアフィリエイトを主業としたユーザーも多く利用している。著作権上グレーないしはアウトとみられるサイトも数多く存在し、同社もそれを認識していながら目をつむっている状況は、企業のモラルやコンプライアンスにおいて許されるべきではない。「livedoor Blog」だけでなく、同社が運営しているサイト「NAVERまとめ」においても、同様な違法性が多々指摘されており、株式上場に向けて足かせとなっている。これらのサービスは同社のドル箱となっており、他社に売却したりサービス停止をすることは躊躇しているとみられる。
上場の機を逃してしまったといわれるLINE株式会社だが、新社長の下で大きく方向転換を果たし、さらなる発展を遂げることはできるだろうか? 今後の動向に注目したい。
(文=編集部)