大塚家具は1月28日、前社長の大塚久美子取締役が同日付で社長に復帰したと発表した。創業者の大塚勝久会長兼社長は代表権のある会長に就いた。久美子氏は昨年7月の取締役会で突如社長を解任され、勝久氏が社長を兼ねてきたが、わずか半年で元のサヤに収まった。
久美子氏は勝久氏の長女。解任された社長が復帰する異例の人事について、大塚家具は「経営管理体制を強化する(ため)」とのコメントを出しただけである。社長解任時点で勝久氏は記者会見を行わなかったが、久美子氏も今回復帰会見を開かない。株式を公開している企業とは思えない対応である。
解任された久美子氏は、今年に入って反撃ののろしを上げた。「週刊東洋経済」(1月24日号)の単独取材に応じ、「株主提案を検討している」ことを明らかにした。大塚家具の株式は、勝久氏が発行済み株式の18.04%を保有する筆頭株主で、2位は一族の資産管理会社ききょう企画で9.75%を握る。ききょう企画の株主は勝久氏の妻・千代子氏や久美子氏ら5人の兄弟姉妹だ。ここが株主提案の主体となるという。
「東洋経済」によると、「14年1月に、長男の勝之氏と母の千代子氏が、ききょう企画の役員を解任された」。父の勝久氏側に母と長男が、長女の久美子氏の側に弟妹が付いたことになる。父の側に付いた長男の勝之氏は大塚家具の取締役専務執行役員営業本部長、久美子氏に賛同した次男の雅之氏は執行役員総務部担当部長。大塚家は真っ二つに割れたわけだ。大塚家内の対立がエスカレートし、それが昨年7月の久美子社長解任につながったといわれている。
●外部株主の介入
さらに、外部株主が介入してきた。投資ファンドの米ブランデス・インベストメント・パートナーズは大塚家具株式を昨年から買い増しており、1月14日付時点で持ち株は10.77%に達した。
ブランデスは、日本では株主提案をする「物言う株主」として知られている。09年4月、8%超の株式を保有していた三井住友海上グループホールディングス(現MS&ADインシュアランスグループホールディングス)に対し、配当性向が低いことを理由に1株当たりの配当を40円に増額するように要求した。三井住友海上が1株当たりの配当を27円とすることと自社株買いの計画を公表したことを受けて、ブランデスは提案を取り下げた。
そのブランデスが大塚家具のお家騒動のキャスティングボートを握った。ブランデスが久美子氏側に付けば、持ち株比率は勝久氏を上回る。株主総会は委任状争奪戦(プロキシ・ファイト)の場となり、大混乱することが考えられた。勝久氏は、株主総会での骨肉の争いを避けたかったのだろう。久美子氏が株主提案をする前に、彼女の社長復帰を決めた。勝久氏が折れ、それを久美子氏が受け入れたかたちだ。