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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第18回

大塚家具内紛、大きすぎる「失うもの」 なぜ父は娘を全力で叩き潰そうとしたのか

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事業ポートフォリオマトリクス

●骨肉の争いが繰り広げられる大塚家具


 大手家具販売の大塚家具に激震が走っています。

 創業者で会長の大塚勝久氏と、その娘で社長の久美子氏が、お互いの経営能力に疑問符が付くとして激しい主導権争いを繰り広げているのです。2月25日の記者会見で勝久氏は「悪い子供を持った」、翌26日には久美子氏が「創業者から離れなければならない」とお互いを非難し合い、関係は抜き差しならないところまできています。会長と社長の骨肉の争いに社内は真っ二つに分かれ、どちらが勝利を収めたとしても事態が混迷することは避けられません。

 この大塚家具の新旧経営者、しかも親子の争いは、根本的な経営方針の違いに端を発します。

 大塚家具を創業した勝久氏は、それまで値引き販売が当たり前だった家具業界に、最初から割引価格を提示して値引きは行わないという業界の慣習を破る手法で成長を遂げてきました。ただ、業界の破壊者だけに、メーカーの中には大塚家具との取引を拒む業者も現れました。そこで、勝久氏は対策としてビジネスを会員制とし、限定した顧客に対してまとめて家具を販売するビジネスモデルを生み出します。不特定多数ではなく、限られた顧客に販売するのだから業界全体には大きな影響はないだろうと、メーカーの怒りをそらす狙いもあったのです。大塚家具はこの会員制により、来店した顧客にはマンツーマンで丁寧に接客して家具をまとめ売りすることで、大きな売り上げを上げていきます。

 ところが、最近ではIKEAやニトリなど家具販売業界に流通革命を引っ提げて参入した新規競合に顧客を奪われ、従来のスタイルは消費者から支持を受けなくなってきました。さらに追い打ちをかけたのが最近の円安であり、売り上げの大半を占める輸入家具の仕入れコストが上昇し、利益が出にくい構造に陥ってしまったのです。

 そこで社長に就任した久美子氏は、これまでのビジネスモデルを全否定し、会員制を廃止して誰でも気軽に足を運べる店舗運営を目指します。そして、中価格帯の家具を単品で販売するビジネスモデルに大きく転換を図ろうとしているのです。低価格帯まで降りていけばIKEAやニトリと正面切っての勝負になりますが、中価格帯であれば目立った競合も存在せず、優位にビジネスを展開できるともくろんでいるのです。

 ただ、このようにこれまでの努力の結晶であるビジネスモデルを全否定された勝久氏は、面白いわけがありません。机上の空論を振りかざし、独断で大きくビジネスを変えようとする久美子氏の経営手腕を問題視して株主総会で解任を提案するなど、後戻りできない深刻な争いへと突き進んでいくことになるのです。経営陣の意見の相違はどのような企業でも避けられないものですが、なまじ親子という関係で本心のぶつかり合いが生じ、修復のできないところまで達してしまったのでしょう。