ファクトリー・オートメーション(FA/工場の生産工程自動化)業界担当の証券アナリストは、「先進国でも新興国でも人件費が高騰している今、どの製造業も開発・生産の省力化が不可避で、それがキーエンスの業績押し上げ要因になっている」と分析する。
FA関連大手メーカーは、いずれも業績好調に沸いているが、中でもキーエンスの業績、特に収益性は突出している。14年度の大手各社の営業利益率を見ると三菱電機が7.3%、オムロンが10.2%、安川電機が7.9%。高収益企業として別格扱いされるファナックが40.8%。これも抜群の収益といえるが、さらに上回っているのがキーエンスの52.6%。売り上げの半分以上が粗利なのだ。株式市場関係者が目の色を変えるのも無理はない。
しかも、キーエンスは市場環境など外的要因で急に営業利益率を伸ばしたわけではない。1987年の大証2部上場以降、ほとんどの期で40%台の営業利益率を叩き出してきた。特に今世紀に入ってからは04年3月期から08年3月期まで5期連続で営業利益率50%超を記録した。その後、リーマンショックの影響で営業利益率は40%台に低下したが、13年3月期は49.3%まで盛り返し、前期は再び50%台に乗ったのだ。
同社は、どうして高収益を持続できるのか。
それは、同社独特の「コンサル営業」にある。FA業界の製品販売は代理店販売が一般的だ。対して同社の場合は、営業社員が顧客の生産現場へ直接乗り込み、職制(工場における管理職)にライン稼働率、不良品発生率などをヒアリングし、顧客の潜在課題を探って開発部門にフィードバックする。開発部門はその情報を元に「世界発、業界初」などの新製品を開発する。それを営業社員が業務改善提案として売り込むという流れだ。
製品単品を売り込むのではなく、業務改善の付加価値を付けることで、同社はコモディティ化(均質化)の激しいFA計測・制御機器という汎用品を扱いながら、価格競争に巻き込まれる事態を巧みに避けている。他社が容易にまねのできないコンサル営業を土台にした事業モデルが、同社の強みとなっているのだ。