営業社員のコンサル能力を高める仕組み
「社員の知恵や活力を引き出す」ための合理主義追求の裏には、「最小の設備と人員で最大の生産性を上げる」したたかな経営目的もある。
それを具現化したのが、生産面では自社工場を持たないファブレスだ。生産を外部委託することで、自らは経営資源を製品の企画・開発に集中投下できる。営業面では前述のコンサル営業になる。こちらも「必要最小限の人員で最大の売り上げ」思想が貫かれている。
このため、社員数約2000名の半数を占める営業社員に同社が求めるのは、顧客の生産に関する課題の最適解をいかにして提案できるかのコンサル能力といわれる。では、同社はいかなる仕組みで営業社員のコンサル能力を高めているのだろうか。
FA業界の経営コンサルタントは、それを次のように説明する。
「同社のコンサル営業は、営業社員が顧客の製造現場まで入り込み、そこで見聞した情報から(1)『顧客ニーズ探索・翻訳』→(2)『顧客へのソリューション提案』→(3)『顧客への徹底フォロー・提案の実現』のサイクルを繰り返すのが特徴。このサイクルにより、顧客自身が気づいていない潜在的課題の発見、潜在的課題解決による信頼獲得、それによる製造現場の奥深い場所へのアクセスが可能になる」
つまり生産現場の企業秘密に近い情報も握れるわけだ。前出コンサルタントは「このサイクルと、ソリューション提案をするための社内連携を営業社員が主体的に一気通貫で行っているところが、同社営業活動の強みであり、同社の持続的高収益の原動力にもなっている」と指摘する。
この営業力には営業社員への権限委譲、自社製品の熟知、コンサル営業能力の向上、顧客情報・コンサル成功事例共有などが不可欠で、これらを実現する仕組みとして同社はテリトリー制、製品勉強会定期開催、無駄な外出排除、ロールプレイングの4つを営業活動の基本に据えている。
営業所の組織はセンサー、モーター、計測器などの製品群に営業チームが分かれ、各チームメンバーは所属営業所エリア内の複数顧客を一人で担当するテリトリー制になっている。そして当該営業社員は、担当顧客に対するコンサル営業の企画から問題解決のプレゼン、アフターフォローまでのすべてを委ねられている。営業所長やチーム責任者は、助言をしても、活動の指示をすることはない。