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トヨタ世界一陥落、VWにおびえ“遅きに失した”巨額投資 工場新設凍結の代償

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トヨタ「カローラ アクシオ」(「Wikipedia」より/Turbo-myu-z)
 トヨタ自動車が、中国とメキシコへの工場新設を決定し、2013年4月から凍結してきた工場新設を解除した。世界販売台数が1000万台を超え過去最高益となっても「意思ある踊り場」(豊田章男社長)と位置付け、原価低減や商品力の向上に力を入れてきたトヨタ。しかし、急成長を続ける独フォルクスワーゲン(VW)の影が確実に迫ってくる中、トヨタも工場新設の再開を決断せざるを得なかった。

「このままだと間に合わない。VWに抜かれるのは時間の問題」(トヨタ幹部)――。トヨタが工場新設を正式に発表してから1週間後、トヨタが抱いていた危機感が現実となった。14年度の世界販売台数で、トヨタはVWに世界トップの座を明け渡した。トヨタの14年度のグループ世界販売台数は前年比0.3%増の1016万台だったのに対して、VWは同3%増の1019万台と3万台差でトップとなった。14年暦年ではVWの1014万台に対してトヨタが1023万台と9万台の差があったのが、トヨタはあっさりと抜かれた。

 工場新設を凍結しているトヨタが、中国や中南米で積極投資を続け、生産能力を増強してきたVWに世界トップの座を奪われるのは時間の問題とみられていたが、それが現実となった。

工場新設凍結の弊害


 トヨタは2000年代前半、世界中に工場を相次いで立ち上げ、毎年50~70万台分の生産能力を増強してきた。しかしその後、08年のリーマンショックを機にした世界的な金融危機で新車需要が激減すると、トヨタは大量の余剰生産能力を抱えることになり、09年3月期には赤字に転落した。その後、東日本大震災やタイの洪水などでも減産を余儀なくされたものの、生産台数と業績は確実に回復してきた。それでも、過去の工場新増設による規模の急拡大が「制御不能の業績悪化」につながったとの反省に立ち、13年4月から工場新設の凍結を打ち出した。

 しかし、既存工場の稼働率はグローバル全体で90%を超えている中で、全社一律での工場新設凍結には弊害も目立ち始めた。日産自動車やホンダをはじめ、世界中の自動車メーカーが工場を新増設しているメキシコは、さながら「中米のデトロイト」となっている。安い賃金を武器に低コストの新車を生産し、米国市場などに価格競争力の高い新車を輸出している。トヨタは今回メキシコ進出を決定したが、生産開始は19年からで、出遅れ感は否めない。

 今回、工場新設を決めた中国も同様だ。トヨタの中国にある工場の合計生産能力は年間103万台。このうち、14年に現地生産したモデルの販売台数は95万台だった。14年、トヨタにおける新車販売台数は103万台と過去最高で、現地生産能力が今後不足するのは確実だ。トヨタは広州市に17年稼動予定の新工場を建設する計画だが、生産能力は年間10万台で「規模としては不足気味」(業界筋)との見方もある。