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容易ではないVWへのキャッチアップ
トヨタは今回の工場新設再開に当たり「ただ単に規模を拡大するつもりはない」(トヨタ幹部)としている。メキシコ、中国ともに新工場は伸縮自在ライン、床置き可能な小型設備のほか、コンパクトな塗装ブースなど、革新的な生産技術を盛り込み、「単なる量を求めた工場づくりから、競争力のある新しい工場づくりに発想を転換する」(同)。
こうした転換によって工場の建屋や設備を中心とする初期投資部分は、08年当時と比較して約40%低減できるという。しかし、メキシコ新工場は生産能力が年間20万台規模に対して総投資額は約10億ドル(1200億円)。工場を新設する国や地域によって大きく異なるものの、一般的に同規模工場の投資額が700億円前後とされている中で、投資額は巨額で効率が高いとはいい難い。メキシコ進出を先送りしていた間に「インフレが進んだ」(トヨタ幹部)としているが、進出に出遅れたことによるマイナスは大きい。
VWの迫る影におびえ、巨額投資に踏み切るトヨタ。しかし、中国新工場の立ち上げが17年、メキシコが19年になる。中国での生産能力を増強しているVWは今後も世界販売台数を着々と増やしていく見通しで、トヨタを引き離しにかかるとみられ、これをキャッチアップするのは容易でない。工場新設凍結の経営判断が、今後問われることになりそうだ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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