経営の迷走も相変わらず歯止めがかからない。サラ・カサノバ社長が4月27日、「包括的な業績回復策」と自信満々に記者発表した「ビジネスリカバリープラン」も「社内の実態とかけ離れた机上プラン」と、株式市場関係者に酷評された。当日の記者会見でも、記者の質問にカサノバ社長は的確な回答ができず、記者席から「このプランは一体誰が立てたのか」との疑問が呈されるほどだった。
消費者の「マック離れ」に歯止めがかからない中、このところ、「賞味期限が切れたハンバーガー株」といわれるマクドナルドに対し、「新鮮なハンバーガー株」といわれるモスフードサービス(以下、モスフード)の人気が株式市場でジワジワと高まっている。経営コンサルタントは「モスフード再成長の軌跡をたどると、カサノバ社長の頭でっかちぶりが反面教師的に見えてくる」という。
経営トップが自ら消費者に密着する努力
「本社にこもってマーケティングデータにうつつを抜かし、現場の実態を知ろうとしないカサノバ社長」(証券アナリスト)と対照的に、モスフードの櫻田厚会長は現場好きだ。今年3月25日の午後、櫻田会長は鹿児島市内のホテルにいた。モスフードが同ホテルの宴会場で開催した「モスバーガータウンミーティング」に出席するためだった。
同ミーティングは、同社が11年頃から持続的成長策として取り組んでいるダイレクトコミュニケーションの一環。櫻田会長と役員が一緒に全国47都道府県を巡回、消費者の声を直接聞くのが目的だ。狙いは、地域消費者から地域特有のニーズを経営陣が皮膚感覚で吸い上げることにある。マーケティングデータに基づき経営計画を立てるのが、チェーンストア経営の基本といわれている。だが、前出経営コンサルタントは「消費者の嗜好や消費行動が多様化した今日、このマーケティングデータ頼りが消費者ニーズとの乖離を生んでいる」と指摘する。
モスフード関係者も「今や消費者ニーズは全国一律ではない。地域ごとにニーズの有り様が異なる。それを確実に把握しようとすれば、地域消費者と直に接し、皮膚感覚でそれを感じるしかない。タウンミーティング開催も、櫻田会長のそうした認識が発端だ」と語る。