仕事での会議や家族、友人とのコミュニケーションなど、誰かを説得することが必要になることは多い。とはいえ、人を説得するのは、思うようにいかないものだ。
では、どうすればいいのか。その答えは、2300年前の書物にあった。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの『弁論術』だ。
本書『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(高橋健太郎/著、朝日新聞出版/刊)は、アリストテレスが『弁論術』で示した説得のための技法を紹介する一冊。どんな内容なのか?
アリストテレスの考えた弁論術とは、特別な知識や専門用語を使わずに相手を説得する方法だ。アリストテレス弁論術では、特定の人たちにしかわからないことや専門知識は一切使わない。かわりに、誰もが知っているような一般常識だけを前提に議論を進める。
ここが大きなポイントで、だからこそ、どんな問題でも応用がきくと著者は述べる。
専門知識を使わずに相手を説得するにはどうすればいいのか。それは、「相手の納得」だ。相手の納得を積み重ねることで、最終的にこちらの主張に納得させるのだ。つまり、「常識」を出発点に、「相手の納得」を積み重ね、説得するというのが弁論術の基本ルールとなるのだ。
ちなみに、「常識」とは「あらかじめ納得済みの事柄」だ。「それについてはもっともだ」とすでに理解している事柄のこと。どんなテーマであれ、まず重要なのが相手との常識の共有。こちらだけが常識だと思っているような事柄を一方的に相手に押し付けるようなことをすると、失敗してしまう。説得のためには相手の常識から出発しなければいけないのだ。
この弁論術による説得は3つの要素によって成り立っているという。
1.話す人の人柄
2.聞く人の気分
3.話の内容の正しさ
日常を振り返ってみると、現代も、2000年以上前にアリストテレスが言ったこととそう変わらない。
ただし、説得はこの3つのパターンにすっきり分かれるとは考えない方がいい。実際に人が人を説得するシーンでは、この3つが常に複雑に入り交じっているもの。現実の議論では「人柄」「聞き手の気分」「話す内容の正しさ」の三拍子をそろえる心構えが大切となる。
どの時代のどこの国の人々も変わらず、人間関係は悩みの種だったようだ。仕事でもプライベートでも、日常の中で誰かと議論をしたり、説得するシーンに頻繁に遭遇するだろう。そんな時、2300年前のアリストテレス弁論術が役に立つはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。