人間の体は、60%以上が水でできているといわれています。寝起きにコップ一杯の水を飲むと体が目覚め、体調を整えてくれます。これからの汗をかく季節は、一日に最低1.5リットルの水分が必要ともいわれています。
そのように体に必要な水を、単純に価格だけで選んでいませんか?
「おいしい水」とは、どのようなものでしょうか。水のおいしさには4つの条件が関係します。
ひとつ目は温度です。一般的に水をおいしく感じる温度は、摂氏10~15度とされています。真夏に山の沢の水を飲むとおいしく感じるのも、温度の影響が大きいのです。水道水でも冷やして飲むと、いつもよりおいしく感じるはずです。
2つ目はミネラルです。科学実験などで使用する純水や蒸留水にはミネラルが含まれていません。飲んでみると味わいがなく、おいしさを感じません。水をおいしく感じるためには、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラルがある程度含まれていることが大切です。
3つ目は硬度です。硬度とは、カルシウムやマグネシウムなどの含有量により測定されます。硬度が低い水を軟水、高い水を硬水と呼びます。軟水はクセがなく、硬度が高くなると好き嫌いがはっきり分かれます。
4つ目は二酸化炭素です。夏の暑い日にソーダ水を飲むと、さわやかでおいしいものです。ペリエ(ネスレ)やゲロルシュタイナー(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)など、自然に二酸化炭素が含まれているものもあります。コンビニエンスストアで炭酸水の種類が増えてきたのは、炭酸水のおいしさに気がついた人が増えてきたからだと思います。
この4つの条件が備わった水は、とてもおいしいものです。
おいしい水を求めて
おいしい水が水道から出る地域に住んでいる人たちは、非常に幸せだと思います。都会では、ペットボトルの水を買ったり、スーパーマーケットの給水サービスを利用している人も多いと思います。浄水器を取り付けている家庭も多いと思いますが、浄水器のフィルターは定期的に交換しているでしょうか? 定期的に交換しなれば、雑菌の温床となっている恐れがあります。
スーパーでは、さまざまな浄水器を設置して、会員登録すれば無料で利用できる給水サービスを行っている店舗が増えていますが、「そのまま飲めます」と表示している場合と、「加熱してご使用ください」と表示している場合があります。これらは、管轄する保健所の判断となっているのです。
スーパーの浄水器は家庭用のものよりも性能がいいので、塩素臭がよく抜けておいしく感じます。ところが、検査を行ってみると、細菌に汚染されている場合があります。原因は、浄水器の管理が悪いためです。浄水器の中身を確認することはできませんが、浄水器の周りが汚いお店は要注意です。
浄水器の水を家庭に持って帰るための容器も注意が必要です。家庭で毎回きれいに洗っていればいいのですが、洗剤で洗わずに何度も使用していると、ボトルの中で細菌が繁殖してしまいます。浄水器のそばに、ボトルを洗うことのできる十分な大きさのシンクと、ブラシや洗剤が整備されている親切な店舗もあります。
自分に合う水を探そう
おいしい豆腐や日本酒を生産できる地域は、水もおいしいものです。おいしい水があるからこそ、豆腐工場や酒蔵ができたといっていいでしょう。
「東京水」という、東京の水道水をただペットボトルに詰めた製品が市販されています。東京の水道水でも、冷やして飲むとおいしく感じます。水道水をそのまま飲むことに抵抗がある人もいるかもしれませんが、実は日本で製造・販売されているペットボトルの水の中には、水道水と同じ製法、水源のものもあります。必ずしも、「ペットボトルは良い水で、水道水は悪い水」とは言い切れません。
飲み水は、体をつくる基本になります。不思議なもので、自分に合っている水は、自然に、体に吸い込まれていくように飲むことができます。自分に合った、安全でおいしい水を、ぜひ探し当ててください。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)