その理由は、公正・中立の概念に著しく欠けると受け止められる言動がたびたびなされるためだ。国連憲章100条には、「事務総長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない」と規定している。すなわち、公正・中立が求められている。
潘氏は、9月3日に中国北京で行われた「抗日戦争勝利70年」の軍事パレードに出席した。これに対し日本の外務省は、国連に対して「中国の記念行事は、いたずらに過去に焦点を当てるものであり、国連としては中立的な姿勢を示すべきだ」と抗議した。
また、自民党の萩生田光一総裁特別補佐は、「ワールドカップ・サッカーの『審判長』が特定の国の決起大会に出たようなものだ。あってはならない話だ」と批判。さらに、潘氏の出身国である韓国についても「国連の事務総長を担えるだけの国ではなかったということを国際社会が見抜いたのではないか」と私見を述べた。
このような日本側の抗議に対して潘氏は、「国連は中立的な機関ではない」と反論した。「数人の国連メンバーから同様の懸念を受けた」と認めつつ、「過去から学ぶことが重要であり、歴史から学ぶことでより良い未来を期待することができる」「国連を『中立的な機関』と誤って捉えている人がいるが、ある意味では『中立な機関』にはなりえない」「国連は公正・公平な機関だ」と強調し、自己の行為を正当化した。
潘氏はこれまでにも、歴史認識で日本に反省を求めるなど、日本に対して敵対的ともいえる発言を繰り返している。そのたびに、日本政府は「中立を守るべき立場の事務総長の発言として適切か」などと非難する声明を出している。
国際的低評価の潘氏
潘氏に批判的なのは日本だけではない。軍事パレードへの出席に対しては、各国の識者や国連職員からも非難の声が上がっている。
2012年にシリア国内で大虐殺が起こった際には、なんら特別な措置を取らなかったことに対して、米ニューヨークタイムズ紙は『潘基文は一体どこにいるのか』と題する記事の中で「潘基文事務総長も国連もシリア国内の大虐殺を止めることに関しては、まったく無力だった」と失望感をあらわにした。さらに「国連史における最悪の事務総長というレッテルを貼られてしまった。“無力な傍観者”“どこにもいない男”というありがたくない形容も枚挙にいとまがない」と酷評された。