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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免

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複雑な思いで見ている『下町ロケット』


 毎週日曜日の夜9時からTBS系で、池井戸潤原作の連続テレビドラマ『下町ロケット』が放送されている。町工場の佃製作所が、大企業の帝国重工にロケットエンジンの部品を供給する痛快な物語である。番組を楽しむと同時に、毎度モノづくりについて深く考えさせられる。

 しかし、スポンサーの1社が粉飾会計に揺れている東芝で、そのCMが流されるたびに虚しい思いがするのである。果たして東芝の黒い霧が晴れる日はくるのであろうか。あるいは、下町ロケットが最終回を迎えるまで東芝は東証1部上場を維持することができるのだろうか。筆者の不安は尽きない。

 本稿では、11月9日に公表された役員責任調査委員会の報告書を検証する。そして、筆者の疑惑が、本当に粉飾に室町正志社長がかかわっていないのか、東芝の基幹事業であるNAND型フラッシュメモリに粉飾はなかったのか、の2点にあることを論じる。

納得できない役員責任報告書の結論


 東芝は9月17日に、社外の弁護士3人で構成する役員責任調査委員会を設置し、2009年3月期から14年4~12月期に取締役や執行役員を務めていた98人について、粉飾会計にかかわっていたかどうかを調査した。

 調査委員会は11月7日に報告書を東芝に提出し、東芝は同日、5ページの概要をホームページに公開した。また、11月9日に111ページからなる報告書の全文を公開した。その結論は以下の通りである。

(1)西田厚聡元社長、佐々木則夫元社長、田中久雄前社長、村岡富美雄元CFO(最高財務責任者)、久保誠元CFOの5人は、取締役として十分に注意して職務を遂行する「善管注意義務」を怠ったとして、計3億円の損害賠償を求める。
(2)第三者委員会の報告書で粉飾会計への関与が指摘された14人のうち、上記5人以外は、法的責任を認める証拠がないとして、訴訟の対象に含めない。
(3)調査した取締役や執行役員98人についても、証拠がないため、訴訟の対象に含めない。
(4)そして、現取締役社長の室町正志氏については、報告書の中に一切の言及がない。

 これらの結論に対して、例えば11月10日付日本経済新聞は、損害賠償の対象を意図的に最小化していると批判している。筆者も同意見である。しかし、これに対して調査委員会は次のような見解を述べている。

(1)西田氏等5人は、ガバナンスに対する信頼を失墜させ、信用を著しく毀損した。
(2)5人の行為は市場の健全性を害する。看過されるべきではない。
(3)5人の行為は個人的利益を図ったものではない。
(4)回収可能性も勘案した額の一部を当面の請求とすることが相当。
(5)5人以外の調査対象者は法的責任を認めることができない。

 筆者は、調査委員会の結論にも見解にもまるで納得できない。その理由を以下に述べる。