東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免
東芝の半導体は、粉飾があったディスクリートとシステムLSIにおいても責任追及がなされず、NANDフラッシュについては調査すらも行われない。また、半導体出身の現社長の室町氏は、報告書に名前すら記載されない。こんな状態で、東芝が信頼回復などできるはずがない。
NANDフラッシュと室町社長は聖域なのか?
7月21日に公表された第三者委員会の報告書には、次のような記述がある。
「五 本委員会の調査方法等の概要と調査の前提
2 調査の前提
(5)本委員会の調査及び調査の結果は、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである。このため、本委員会の調査の結果は、第三者に依拠されることを予定しておらず、いかなる意味においても、本委員会は第三者に対して責任を負わない
(8)…(前略)…本委員会においては、東芝と合意した委嘱事項以外の事項については、本報告書に記載しているものを除き、いかなる調査も確認も行っていない」(本文ママ)
そして、11月9日に公表された役員責任調査委員会の報告書には、次の記述がある。
「1 本報告書の目的
本報告書は、株式会社東芝(以下『東芝』という。)において、東芝に関する2015年7月20日付株式会社東芝第三者委員会(以下「第三者委員会」という。)作成に係る調査報告書(以下『第三者委員会報告書』という。)で指摘された不適切な会計処理につき、東芝の取締役若しくは執行役の地位にある者又はその地位にあった者(以下『現旧役員ら』という。)の職務執行に関する法的責任の有無及び現旧役員らに対し損害賠償を請求すべきか否かについて調査し、これに関する東芝における検討・判断に供するために提出するものである」
(原文ママ)
以上から、第三者委員会では、「東芝のためだけに」調査を行うことが目的で、それゆえ調査は「東芝と合意した委嘱事項」に限定し、NAND型フラッシュメモリは東芝の意図によって調査から外されているのである。
そして、役員責任調査委員会では、「第三者委員会で指摘された不適切な会計処理」ついてのみ、それにかかわった現旧役員らの調査を行った。したがって、第三者委員会で調査対象となっていないNAND型フラッシュメモリの調査は一切行われないし、第三者委員会の報告書に名前の記載がなかった室町氏についても、調査はなされなかったということだ。
このように見てみると、NAND型フラッシュメモリと室町社長については、聖域として最初から調査から外されていたのではないかという疑惑を持たざるを得ない。
東芝は、第2次、第3次委員会を立ち上げてでも、粉飾に室町社長がかかわっていないのか、NANDフラッシュメモリに粉飾はなかったのかについて徹底的な調査を行い、その結果を公表するべきである。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)