関係者によると、7月末にPwC側から社長に経過報告があり、その時点で把握している簿外負債の金額は「5百数十億」だという。前受金を計上した場合は債務超過に転落すると見られる。ミュゼ側としては、前受金を計上することには抵抗感が強く、経費削減や高速脱毛器の導入などで前受金消化のスピードを速めることで再建していきたい構えだ。
ミュゼをめぐっては、インターネットの口コミなどで「予約が取れない」といった顧客の不満が書き込まれていたが、経営不安が囁かれるようになったのは今年に入ってからだ。ニュースサイト「東京アウトローズ」、会員制国際情報サイト「Foresight」(新潮社)、総合情報誌「FACTA」(ファクタ出版)がこれまで報じている。
巨額の広告費も
前受金に関する問題の会計処理だが、銀行側もこれまで追認していた可能性が高い。特に常陽銀行は関係が深く、ジンの役員には同行出身者が就任し、過去4度のシンジケート・ローンの幹事も同行が務めている。今回、同行が前受金を問題視したのは、資金繰り悪化に加えて上述のような報道が相次いだためと思われる。
ジンは本来負債計上すべき前受金を売上計上することで、毎月10億円ともいわれる額を使い広告をうち、ゴルフやサッカーのスポンサーとなり、高橋仁社長個人も数億円もの役員報酬を得て競走馬を10頭近く所有するなど、気前のいい経営をしてきた。しかし、前受金が簿外となっている以上、その保全措置はおざなりになる。つまりは、250万人の会員が被害にあう可能性があるわけだ。
なお、筆者は今年4月にジンに対して取材を申し込み、高橋社長に対しても電話にて回答を求めたが、ジンは取材を拒否している。
(文=村上力/フリーライター)