東芝粉飾、調査報告書に重大な疑惑 意図的に室町社長への追及せず、当事者は無罪放免
室町社長は、田中前社長の辞任会見の時から、第三者委員会の報告書に自分の名前が一切出ていないことから、粉飾には一切「かかわっていない」と言い続けている。半導体出身のエキスパートである室町氏のこの発言を、筆者はまるで信用できない。「かかわっていない」のなら、そのことを証明すべきである。少なくとも調査委員会は、室町氏に対する調査を行うべきだ。
半導体の調査結果はたった3ページ
111ページからなる調査委員会の報告書全文を印刷して見ると、第三者委員会の報告書で粉飾の指摘があったインフラ工事、パソコン、テレビについては、どの役員にどのような法的責任があるかを詳しく記述している。ところが、半導体に関する調査結果は、111ページ中たった3ページしかないのである。そして驚くべきことに、次のように結論されている。
「半導体事業を所管するS&S社において行われた不適切な会計処理の概要は以下のとおりであるところ、同会計処理の問題点について第三者委員会報告書で言及されているものの、当時の執行役または取締役において、不適切な会計処理が行われていることを認識し、又は関与していたことを窺わせる資料を確認するに至らなかった。そのため、以下の案件については、執行役又は取締役の責任を肯定することはできない」
つまり、証拠不十分で、誰も責任追及しないということである。「そんな、バカな」としか言いようがない。本当に調査委員会は、調査を行ったのか。その報告内容がたった3ページというのは、どういうことか。こんな状態で、誰も納得できるはずがないだろう。
結局、NANDフラッシュへの疑惑は晴れない
筆者は、7月21日に第三者委員会の報告書が発表されたときから、NANDフラッシュも粉飾会計をやっていたのではないかという疑惑を持っている。その理由は、ディスクリートやシステムLSIは臨時の標準原価改訂を行ったときに利益のかさ上げをしていたが、NANDフラッシュを製造している四日市工場も、09年3月期から14年4~12月期の間に2回(11年度と12年度)、臨時の標準原価改訂を行っていたからである(表1)。
第三者委員会では、東芝の要請によって、半導体の調査対象をディスクリートとシステムLSIだけに限定した。そのため、NANDフラッシュで粉飾がなされたか否かは、現時点でも謎に包まれたままである。今回の役員責任調査委員会で、その謎が解明されることを期待したのだが、まったく甘かった。謎が解明されるどころか、より東芝に甘い調査結果を導き出していたからだ。