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インフルエンザを1日で治す薬等、限られた薬のみ優先審査ではなく、全薬を「優先」すべき

文=松井宏夫/医学ジャーナリスト
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インフルエンザを1日で治す薬等、限られた薬のみ優先審査ではなく、全薬を「優先」すべきの画像1「Thinkstock」より
インフルエンザを1日で治す薬」

 こう聞いてびっくりしない人はいないでしょう。塩野義製薬が3年後の2018年の実用化を目指すそうです。

 毎年約2500万人がワクチンの接種を受け、約1000万人がインフルエンザに罹患しています。治療となると最も知られているのがタミフルですが、これは発症から48時間以内に用いる必要があります。効果があるといっても1日で治るわけではありません。だからこそ、塩野義製薬が実用化を目指す薬は画期的といえるのです。

 この薬の実用化が早いとされるのは、厚生労働省が導入した「先駆け審査指定制度」に指定されたからです。今年10月に優先的審査対象となったのは50種類の中から選ばれた6種類の薬。インフルエンザのほかには、製薬会社MSDの胃がんのがん細胞を減らす薬、アステラスの急性骨髄性白血病の薬などが選ばれました。

 先駆け審査指定制度に選ばれる条件は、以下の2点。

(1)世界に先駆けて“日本で”早期開発・申請されるもの
(2)薬の開発初期の臨床試験データから、それまでの治療法と比べて大きな効果があるもの

 選ばれると、通常数カ月かかる審査前の手続きが1カ月に。また、1年かかっていた審査が半年に短縮されます。これまでよりも審査期間を短くして、より早く患者が薬の恩恵を受けられるようになります。その点は良いことですが、ここで疑問も感じてしまいます。

審査制度の根本的対策が必要

 これまでの治療に比べて大きな効果があるから審査を早くするのではなく、すべてを効率的に早くするのが本来あるべき姿なのではないでしょうか。患者さんはみな同じ気持ちで薬を待っているのです。

 日本の審査については「ドラッグ(薬品)・ラグ」「デバイス(医療機器)・ラグ」が以前よりずっと指摘されてきました。最近は以前と比べるとかなり審査は早くなっているようですが、それでもほかの先進国と比べるとまだ差があります。

 それを解消するには、人員の増加がポイントになります。審査を担う医薬品医療機器総合機構の人員は約400人ですが、米国でこれに相当する機関の人員は約2000人に上ります。米国と日本の人口を考えると、日本では1000人程度確保すべきだと考えられます。必要なところに必要な数の人がいないという状況を正せば、先駆け審査指定制度も必要なく審査は迅速に進み、ドラッグ・ラグやデバイス・ラグなどの言葉が消滅するのではないでしょうか。
(文=松井宏夫/医学ジャーナリスト)

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