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片山修「ずたぶくろ経営論」

東芝とVW不正、国家レベルの問題に 独裁者専横と社内抗争が国益を損なう事態に発展

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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東芝とVW不正、国家レベルの問題に 独裁者専横と社内抗争が国益を損なう事態に発展の画像1東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)

 不正事件に揺れるのは、日独を代表する巨大企業の東芝VW(フォルクスワーゲン)だ。依然、次々と不祥事が発覚し、一向に事態が収まる気配はない。

 考えてみれば、東芝は日本を代表する名門企業で、その技術力の高さは折り紙つきだ。VWも、ドイツの戦略産業である自動車産業の中核メーカーだ。その両社が揃いも揃って、なぜ不正事件を引き起こしたのか。

 両社に共通しているのは、コーポレートガバナンスの欠如である。この点については、多くの論者が指摘するところだ。今回はコーポレートガバナンス論は別として、そのよってきたる背景について論じてみたい。両社には、事件のウラに潜む共通の人間的ドラマがあるのだ。

国家戦略と密接に絡む巨大企業

 共通の人間的ドラマの1つめは、両社が国家戦略と密接に絡む巨大企業であることだ。東芝は原子力事業や鉄道や電力など社会インフラを担う、日本を背負って立つ企業だ。ましてや、原子力産業の雄として日本のエネルギー政策と密接であり、防衛産業ともつながりが深い。

 VWも国家と密着した企業で、アンゲラ・メルケル政権の後押しを受けている。VWが世界最大の自動車市場中国でNo.1のシェアを誇っているのは、習近平政権とメルケル政権の蜜月関係を抜きには考えられない。

 すなわち、国策と密接に絡むがゆえに、日本は東芝を、ドイツはVWをつぶすことができない。企業規模だけでなく、技術的、社会的に見て、国に対して果たす役割が大きすぎる。“Too Big”でつぶせないのだ。2008年のリーマン・ショック後に、米国が破綻したGM(ゼネラル・モーターズ)を救済したのと似た論理である。

 東芝、VWの混迷はますます深まるばかりだが、今後焦点となるのは安倍晋三首相、メルケル首相が事件をどのような采配を振って収束させるのか。もっといえば、安倍首相はメルケル首相がVW事件に対してどんな手を打つのか、凝視しているのではないか。あえていうならば、日本の場合、金融庁や経済産業省が東芝事件についてどう動くのかも焦点である。

 というのは、国を代表する両社の動向は、断るまでもなくグローバル市場に与える影響が大きい。また、両社の不祥事は国の市場全体の信任損失につながる。両社の透明性を確保して市場の信任を回復しなければ、日本もドイツも海外からの投資を呼び込むことができない。市場の信任回復に向け、両国トップはどう動くのか。

 実は両事件の処理は、それほど国家的な威信と信頼を内包しているのだ。両社の行く末は、両国首相がいかなる判断を下すかにかかっているといっていいだろう。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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