NEW
上昌広「絶望の医療 希望の医療」

医師不足深刻化でも、大学医学部が定員増に必死の抵抗…「医師不足利権」の病理

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

亀田総合病院(「Wikipedia」より/あばさー)
 医師不足の日本で、医師を派遣する権限は絶大だ。そこに利権が発生する。利権にたかるのは、大学幹部や県庁の役人だけではない。医局を仕切る医学部の教授なら、誰もが利権のお裾分けに預かっている。

 大学教授たちがたかる相手は主に民間病院だ。都内の病院経営者は「外科医などを常勤で派遣してもらえば、億単位の売り上げが期待できる。教授に数百万円戻しても十分に元はとれる」と言い切る。

 医師派遣には金がつきまとう。この状況は以前から変わらない。ただ、従来は「袖の下」と見なされていた。ところが、近年の特徴は、公然と行われるようになったことだ。きっかけは「寄付講座」だ。国のお墨付きのもと、役所までが正々堂々と寄付金という「袖の下」を送るようになった。

 この結果、最近は大学以外の医療機関までもが「医師派遣ビジネス」に乗り出している。その一例が千葉県の「医師不足病院医師派遣促進事業」だ。

 この事業では、医療機関が医師1人を千葉県内の自治体病院に派遣すると、医師への給与とは別に月額125万円が派遣元の医療機関に支払われる。3分の2は千葉県、残りは派遣先の自治体病院が負担する。つまり、医師を1名派遣すれば年間1500万円を受け取ることになる。「医師の技量は問われないから、問題のある医師を送ればいい(千葉県の病院勤務医)」ことになる。

 千葉県の亀田総合病院関係者は、「幹部は損税の穴を埋めるため、医師派遣を推し進めている」と打ち明ける。地域医療の雄である亀田総合病院といえども、経営が悪化すれば医師派遣ビジネスに手を染めざるを得ない。

 このように医師不足はさまざまな利権を産み出している。メディアが「医師不足」「医療崩壊」を報じれば報じるほど、利権が拡大する。

多くの利権


 もちろん、厚労省も黙ってみているわけではない。自らの権限を強め、利権に食い込もうとしている。厚労省は14年度から地域医療支援センター運営事業を開始した。その目的について「都道府県が責任を持って医師の地域偏在の解消に取組むコントロールタワーの確立」を挙げている。

 具体的には、この組織が「公的補助金決定にも参画」し、「優先的に支援すべき医療機関を判断」するらしい。これでは、まるで「社会主義」だ。官僚が強大な権限を握る。その結果、多くの利権が生まれる。