これに対し、日本学生支援機構が「奨学金について著しく誤解を招きかねない内容があった」として、機構のホームページに反論文を掲載したのだ。
「返還誓約書に記載された返還総額が借用金額より高い」という番組の指摘については、「返還誓約書には政令で定めた上限利率である3.0%で仮計算した返還総額が印字されている」と反論。さらに「利息が高すぎる」という批判に対しては、「利息付(第二種奨学金)であっても、利率は一般の教育ローンよりかなり低く抑えられている」などと、利率比較表も掲載して説明。そして「奨学金の元々の財源は、国(国民のみなさま)からお預かりしている公的資金であり、約束どおりの返還が行われることによって、後輩学生に奨学金を貸与することができます。どうか、本機構の奨学金事業の仕組みについてご理解いただきますようお願いします」と主張している。
これを受けて、インターネット上では、奨学金をめぐるさまざまな意見が書き込まれているが、確かに現実の奨学金制度は、機構の主張するような先輩学生から後輩学生へと支援のバトンをつなぐような美しいものではない。
機構は「奨学金貸与事業」の名の下、えげつない取り立てを行い、債務者からは「債鬼」と恐れられているのだ。
●高い延滞金で増え続ける借金
「まるでサラ金ですね」そう力なくつぶやくのは、90年代に無利息の第一種奨学金を利用していたBさん。『日本の奨学金はこれでいいのか! ―奨学金という名の貧困ビジネス』(奨学金問題対策全国会議・編/あけび書房)で紹介された一例だ。
Bさんは大学教員を夢見て、研究を重ねてきたものの、教員になるための競争も激化。非常勤講師で日々の生活費を食いつなぐ中、この十数年間(猶予手続き期間も含む)、合計381万6000円の奨学金の返済に追われてきた。精神不安定になって心療内科に通う日々もあったが、時には滞納しながらも返済計画をつくり、毎月5000円ではあるが奨学金を返済してきた。
しかし、借金はなかなか減らない。というのも、返還期限の到来した未払い元金がある場合、その未払い元金に対して、毎年5%の延滞金(平成16年以前の第一種奨学金の場合。平成17年以降の第一種奨学金、または有利息の第二種奨学金の延滞金は年10%になる)が発生するのだ。返済はまず延滞金に、そして残額が元金に充当されるので、5000円では未払い元金はまったく減らずに、延滞金が増え続けるのだ。機構側は、「毎月3万2000円以上払ってほしい。そうしなければ元本が減らない」と催促する。
「もし80歳まで50年間欠かさず、今後も毎月5000円を払ったと仮定すると、総額340万円に及ぶ支払いのほとんどが延滞金に消えてしまいます。そしてなお、残元金と延滞金合わせて、800万円の借金が残る計算です。Bさんが亡くなって相続放棄できない事情があれば、遺族がこの負債を抱えることになります」(同書)