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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

GDPは無意味?経済状況を反映しない…政府はもっと国民の所得を上げる政策を取るべき

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実質GDP、GDI、GNIの推移(「内閣府」より)
 政府が景気動向や分析に使うのは、物価変動を加味しない実質国内総生産(GDP)成長率である。これが減っているので政府は景気が足踏みしていると公言している。しかし、物価変動を考慮した名目GDPや、国内全体の所得を示す国内総所得(GDI)で見れば、日本はそこまで貧しくなっていない。


 なぜなら、物価変動の影響を取り除いた実質的な付加価値を示す実質GDPは、各構成要素の価格をある時点で固定して計測するため(現在は2010年)、海外との貿易に関わる交易条件の変化に伴う実質所得(購買力)の変化が反映されないためである。

 交易条件とは、平たくいえば輸出品の価格と輸入品の価格の交換比率である。たとえば、輸出品の価格に対して輸入品の価格が高くなると、その国の実質的な所得は下がる。原油価格が1バレル=100ドル程度だった頃と、同50ドル割れしている近年を比較しよう。仮に同じ価格で原油の加工品を輸出すれば、実質的な所得が増えるのは明らかだろう。この交易条件の変化に伴う実質所得の変化を示すのが交易利得(損失)である。

 要するに、実質GDPは生産額(P:Product)に注目しているため、海外との貿易取引部分においても輸出入物価の変動を加味した生産額を集計する結果、現実の交易利得(損失)が反映されていない。

実質GDIを増やすことが重要


 一方で、国内の実質的な所得を示す実質GDIを考える場合は、所得(I:Income)に注目するので、輸出入価格の変動による所得も加味されなければいけない。そして、交易条件が有利(輸出価格>輸入価格)となれば実質所得は増え、不利(輸出価格<輸入価格)になれば実質所得は減る。すなわち実質GDPに交易利得(損失)を加えたものが、国内の実質的な所得を示す実質GDIとなる。

 日本は他国に例を見ない特異な貿易構造にあり、必ずしも国内の生産や需要の伸びがそのまま所得の伸びに結びつかない。なぜなら、日本は原油など原材料を輸入に頼る一方で、加工品(電子部品など)の輸出に偏っているため、交易損失の変化が他の先進国よりも極端に大きくなるからである。事実、原油安が進んだ昨年後半以降、交易損失が大きく縮小している。

 このため、日本経済にとっては海外に所得が大規模に流出している実態を反映しない実質GDPではなく、所得に注目した実質GDIを増やすことが重要になる。

 経済のグローバル化により新興国が台頭し、少子高齢化により国内経済が成熟する中では、GDIを大幅に増やすことは困難である。