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羽田発着枠争奪戦の舞台裏〜“優遇”ANAと自民党の蜜月、“冷遇”JALの焦り

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羽田発着枠争奪戦の舞台裏〜“優遇”ANAと自民党の蜜月、“冷遇”JALの焦りの画像1全日本空輸(ANA)の旅客機
「Wikipedia」より/TC411-507)
 東京国際空港(羽田空港)の国際線発着枠の新たな配分が決まった。国土交通省はANAホールディングス(HD)傘下の全日本空輸(ANA)に11枠、日本航空(JAL)に5枠を割り当てることを決めた。

 羽田の国際線発着枠は、1枠(=1往復分)で年間売上高が100億円、営業利益は10数億円(JALは20億円と推計)が見込めるドル箱ならぬ“プラチナ路線”なのだ。今回ANAはJALより6枠多く得たことで、ANAの売上高は単純計算で年間600億円、営業利益は60億円以上、JALよりかさ上げされる。

 内訳だが、英国、フランス、中国(北京)、シンガポール、タイの5カ国の路線は、両社に1枠ずつ配分した。一方で、日本側に1枠しか割り振られていないベトナム、インドネシア、フィリピン、カナダの路線はすべてANAが独占、日本に2枠与えられているドイツの路線も2枠ともANAが確保した。ANAは羽田発着の新路線でドイツ、ベトナム枠を得たほか、成長市場である東南アジアの便も手に入れた。

 2014年3月末以降、午前6時〜午後11時までの昼間発着枠は1日当たり40枠増える。このうち半分を海外航空会社に割り当てる。米国行きの割り当てがまだ決まっていないため、日本側の20枠のうち16枠について配分を決めた。

 これまではANAとJALに8便ずつの均等配分だった。ANAは自社に多くなるよう傾斜配分を主張、JALは均等配分を狙っていた。国交省が傾斜配分に踏み切ったのは、公的支援による「焼け太り」批判が高まるJALに利益面で大きく引き離され、厳しい経営が続くANAに配慮したものだ。税負担が免除されていることもあり、JALの13年3月期の連結最終利益は1716億円。ANAHDの431億円の約4倍と大きな格差が生じた。

 国交省の平岡成哲・航空事業課長は記者会見で、「(JALとANAに)体力差が生じている。公平な競争基盤を確立する必要がある」と述べ、ANAに多く配分した理由を説明した。発着枠が傾斜配分されたのは、今回が初めてではない。12年11月の羽田空港国内線の割り当てでも、ANAが8枠だったのに対してJALは3枠にとどまった。ANAは国内線、国際線でJALに大差をつけ2連勝した。

●官邸主導で決まった枠配分

 20年の東京五輪開催が決まり、羽田空港は日本の表玄関になる。国際線発着枠は、ナショナル・フラッグ・キャリアの座を懸けた争奪戦であった。

 今回ANAが発着枠争奪戦に勝った最大の要因は、昨年12月の政権交代にある。

 民主党主導のJAL復活について、ANAと自民党は「過剰支援」だと批判してきた。自民党の政権復帰が濃厚になった昨年11月、国内線の発着枠配分で国交省が政治的判断して、ANAに有利な傾斜配分に踏み切った。だが、今回の国際線の発着枠は均等配分するとみられていた。

 しかし、7月の参議院選挙で自民党が圧勝。さらに主要官庁の幹部人事は、民主党色を払拭するために官邸主導で一新された。官僚の泣きどころは人事だ。民主党と違い自民党は、人事を使って官僚をコントロールするすべを心得ている。巨大与党の意向を無視できる国交省航空局の幹部はいない。

 JAL側は、経営の第一線から退いていた稲盛和夫名誉会長が動いた。今年5月、安倍晋三首相との会談を申し入れ、事態打開を試みたが会談は実現しなかった。

 危機感を強めたJALはロビー活動を展開。北海道エアシステム(HAC)を再び子会社にして支援することの検討や地方10路線の再開など、自民党運輸族を意識する政策を次々と発表した。

 そんなJALの焦りをよそに、9月14日、安倍首相はANAのロビー活動を指揮する石坂直人調査部長と富士山麓の鳴沢ゴルフ倶楽部(山梨県)でプレー。今夏、自民党閣僚級の外遊は、ほぼANAを利用するなど、ANAと自民党との蜜月ぶりを見せつけていた。

 政府関係者は「今回の枠配分は官邸主導で決まった」と明かす。傾斜配分を求めていたANAHDの伊東信一郎社長は「当社の経営努力が認められた。国民の貴重な財産である発着枠を有効活用したい」と歓迎した。

 一方、均等配分を主張していたJALの植木義晴社長は「根拠が不透明で不公平な配分だ」と非難。決定の見直しを求める文書を、太田昭宏国土交通相と国交省航空局長に提出した。併せて配分決定に至る過程を記した議事録など、行政文書の開示を求めた。納得する回答が得られない場合、「次のステップを考えざるを得ない」と言っており、植木社長は行政訴訟に含みを持たせた。

 株式市場にとってもここまでの傾斜配分は想定外で、JALの株価は当然一時下落したが、ANAHDも上がらない。行政にここまで左右される日本の航空業界を敬遠する外国人投資家が多いからだ。

●米国との航空交渉は難航

 来春の発着枠拡大で、羽田空港の国際化は総仕上げを迎える。ところが、目玉となる米国路線の調整が難航している。米国の航空会社の足並みが揃っていないためだ。

 自由競争を促した結果、米国の航空会社はデルタ航空とアメリカン航空、ユナイテッド航空の3社に集約された。コードシェア(共同運航便)でユナイテッドはANA、アメリカンはJALをパートナーとしているが、デルタは日本にパートナーがいない。羽田の国際線は日本の航空会社にも割り振られるため、デルタの不利が際立つ。

BusinessJournal編集部

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