「竹田さんの性格を一言で表すなら、“おぼっちゃん”ですね。職員を叱責したり、感情をあらわにしたりするようなところもない。育ちが良いためなのでしょうが、仕事をガツガツという印象も受けません。基本的には“下に任せている”というスタンスで、本当に今回の贈収賄事件の実務的なことは知らなかったと思いますよ。だから、竹田さんの会見の内容に嘘はないと思います。ただ、仕事ができるタイプでもなかったのは間違いないですね。良くも悪くも、会長という立ち位置を与えられた“お飾り”的な方ですね」
これは、日本オリンピック委員会(JOC)職員によるJOC会長・竹田恆和氏の人物評である。
東京五輪の招致活動をめぐる不正疑惑の渦中にある男は今、岐路に立たされているのかもしれない。
竹田氏には、東京への五輪招致が決まる直前、日本円に換算して2億3000万円もの贈収賄事件に関与したとの容疑がかかっており、現在もフランス当局の捜査は進行中だ。
1月15日に行われた記者会見では、記者に一切質問させずに退出したことが大きな話題になったが、そこで竹田氏は以下のような弁明を行っている。
「私自身は契約に関し、いかなる意思決定プロセスにも関与していない。最後に書類に押印しただけだ」
だが、この発言に関しては懐疑的な声もある。職務放棄とも取れるこの発言について、組織の長としての責任や資質を疑う声が各メデイアで報じられたことにも妥当性があるといえるだろう。もっとも、竹田氏を知るJOC職員の発言からは、竹田氏のビジネスパーソンとしての基本的なスタンスも見えてくる。
「竹田さんは派閥を好む方で、自分の味方側なのか、敵側なのかという嗅覚が敏感です。それはマスコミ対応に関しても同様です。定期的に新聞社やテレビ局といったマスコミとの食事会をしていましたが、側近には『あの社は好意的だ』『あそこはダメだ』とこぼしていました。IOCの中でも、自分側の人間のことは、わかりやすく可愛がっていましたが、それでも反対派を露骨に不遇にするということはありませんでした。だから、JOCの中での会長評は、実はすこぶる良いんですね。内弁慶というか、内部からの評判は良いけれど、外には敵も多いというところでしょうか」(JOC職員)
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そんな竹田氏の歯車が狂ったのは、ある出来事がキッカケだったという。それは、2016年の五輪招致の失敗にあるという。俗に言う「2016年東京オリンピック構想」だ。
08年に行われたIOC理事会の第1次選考では、東京・マドリード・シカゴ・リオデジャネイロの4都市のなかで、東京はトップの評価を得ていた。ところが翌09年の第2次選考では、まさかの最低票に終わっている。